ニュース画像
多くの人が見守る中、彰義隊墓所で盛大に営まれた150回忌法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 時流ワイドリスト> 「出生前診断」アンケート
時流ワイド

「出生前診断」アンケート(1/5ページ)

中外日報コメンテーターに聞く

2013年5月30日付 中外日報

胎児の染色体異常の有無を高い精度で調べる新型の出生前診断の臨床研究が4月1日から始まったことを踏まえ、中外日報は、宗教界の各分野で活躍する有識者48人に委嘱する「中外日報コメンテーター」に対し、2回目のアンケート「出生前診断について」を実施した。診断への賛否や宗教界の対応など4点について質問し、45人から回答があった。出生前診断への賛否については、人工中絶をめぐる考え方の違いなどから意見が分かれ、医療技術の「進歩」がもたらす「新たな生苦」に苦慮する宗教者の姿が浮かび上がった。

医療進歩で「新たな生苦」

出生前の胎児の状態を診断する出生前診断は、超音波検査、絨毛検査、羊水検査などがすでに広く行われている。妊婦の血液を調べるだけでダウン症などの胎児の染色体異常が高い精度で分かる新型の出生前診断は近年、欧米などで急速に普及し、日本でも4月から一部の医療機関で臨床研究が始まった。

新型出生前診断は、流産の危険を伴う羊水検査に比べて安全・簡単な検査だが、安易な人工中絶の増加など「命の選別」につながる懸念が指摘されている。

コメンテーターへの質問は、①診断への賛否②診断の規制③相談者への助言④宗教界の対応――の4問。

①は「新型や従来の羊水検査等による出生前診断で、染色体異常による胎児の障害の有無を検査することについてどのように考えるか」。

四つの選択肢のうち、A「検査は一切すべきではない」は4人。B「中絶につながるのであれば検査はしない方がよい」が19人、C「遺伝カウンセリングなど環境が整えられれば検査は認めても良く、その上で場合によっては中絶も認められる」が15人と回答がこの二つに大きく分かれた。

自由記述でBの回答者は「胎児の出生権」「命の選別」、Cの回答者は「高齢出産のリスク」「本人の意志」などを理由に挙げた。宗教者として「中絶は避けるべきだが無責任なことはいえない」と中絶をめぐる判断に揺れる回答が、D「その他。分からない」を選んだ理由などにみられた。B・Cいずれの回答者からも障害児を生み育てる環境整備を求める声が多く寄せられた。

②は「新型出生前診断について日本産科婦人科学会は、遺伝カウンセリング体制を充実させることなど検査の実施指針を発表したが、従来の羊水検査等も含め出生前診断について法律の規制はない。規制についてどのように考えるか」。

B「医療関係者が学会などで規制すべきだ」が20人で最多だった。国の規制は「国民的議論が熟」さず「性急」で、「生命の領域を支配しようとする」とし、「専門家集団」である医療関係者の規制が妥当とする意見が多かった。A「国が法的に規制すべきだ」は9人、C「規制せず広く医療を提供した上で個人の判断に任せるべきだ」は8人。D「その他。分からない」は7人。

③は「妻が妊娠中の夫婦が相談に訪れた。『高齢出産のため子が病気を持って生まれる可能性が高くなると聞いた。新型出生前診断を受けたいが結果への不安もある。どうすればいいか』。宗教者として、また宗教的立場からどのようにアドバイスするか」との問いに自由に回答を求めた。

相談者に「寄り添い」ながら「授かりもの」である子供の「いのちの尊さ」を説き、最後は「親の覚悟」の下に相談者が判断すべきだ――などとする回答が寄せられた。

④は「新型や従来の羊水検査等を含め出生前診断について、宗教者や宗教教団などが、どのような対応をすべきか」。

宗教者が「議論」「研修」を重ねて社会に「発言」すべきだとする回答、診断への賛否以前に当事者に「寄り添う」姿勢が必要とする意見があった。

命の選別につながる

アンケートに回答を寄せた作家の玄侑宗久・臨済宗妙心寺派福聚寺住職は「出生前診断の羊水検査では、染色体異常まで分かる。男女の識別も簡単にできる。さらに、胎児がダウン症であるかどうかも、血液検査だけで判断できるようになったということだ。しかし、疑問がある。それを知ってどうするのだろう」と問い掛ける。

「誰かがこう答える声が聞こえる。『選別するに決まってるじゃないですか』。誰がそういうのか。子を授かった親たちではない。こうした技術を商品として開発し、新たな親たちに売ろうとする人々のささやきだ」「日本は医療技術の進歩で、乳幼児死亡率が世界一低くなったが、今度はその技術がさらに進んで胎児の命を奪っていく。今の日本人は何と偉くなってしまったのだろうか。いのちを授けた神さまをさしおいて、命の選別をしようというのだから」

医療技術は日進月歩だ。新型出生前診断の対象はダウン症など3種の染色体異常だが、胎児の「異常」や「障害」をより早く、広く、簡単に見つけ出す検査法が今後も開発されることだろう。

「生・老・病・死」の「『生=生まれること』にかかわる今日的課題」(藤本淨彦・浄土宗総合研究所所長)、「先端技術が生み出した『新しい生苦』」(釋徹宗・浄土真宗本願寺派如来寺住職)にいかに取り組むか。宗教界の対応が問われる。