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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

つながり、そして明日へ 完結(1/5ページ)

2013年1月1日付 中外日報

千の句になって地球を回る

女川第一中の全校生徒 震災体験を俳句に

白球を 追ったあの場所 仮設建ち
白い地に これから絵の具を ぬっていく

東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた宮城県女川町の女川第一中で、全校生徒が授業でさまざまな思いを俳句にしている。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の事業を支援する日本宇宙フォーラムの誘いで、いろんな人々のメッセージを宇宙へ届ける同団体自主企画「地球人の心プロジェクト」に参加し、計千句の「五七五」を収録したDVDが昨年7月21日にロケット「こうのとり」で打ち上げられた。国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に収納され、地球の400キロ上空を90分に1周の速さで回っている。

震災2カ月後に話が来た際、国語担任の佐藤敏郎教諭(48)にまだ迷いもあった。「悲惨な体験をそのまま言葉に出すのはどうか」。町は市街地が流失して900人余りが犠牲になり、3千戸以上が全半壊した。同中でも卒業を間近に控えた3年女生徒1人が死亡、同男生徒1人が行方不明になった。

真っ暗闇 どれだけ明かりを 灯せるか
ただいまと 聞きたい声が 聞こえない

父母や姉を失った友人に寄り添う3年女生徒の気持ちだった。

「やってみようか。別に震災でなくても自分の心を素直に出せばいいんだよ」。だが佐藤教諭が持ち掛けると、生徒たちはすぐ指を折って字を数えながら作句を始めた。「ああ、自分の心を捜し出すきっかけを待っていたんだ」。教諭は胸が熱くなった。

あの空に あの空の上に いるんだね
連れていこう 痛みもつらさも 何もかも
見上げれば ガレキの上に こいのぼり

女川は水産の町。漁業を営む家庭の子も多い。3年男生徒はバスケットボールに一緒に励んだ無二の親友を海に奪われた。

戻ってこい 秋刀魚の背中に のってこい

町はわずかずつだが復興に向かい始める。半年後そして1年後の昨年5月にも作句を続け、少し変化が見えた。

目を閉じて 町のサイレン 8回目
あのときは 無理だと思った 文化祭

佐藤教諭は町内の学校での防災教育も担当し、語り継ぎを指導する。6年生だった教諭の次女みずほさんは、通っていた石巻・大川小で他の児童73人と共に犠牲になった。「いのちを守ることが未来への道です」。自らの思いも込めそう訴える。地元の住職と「生きるって何だろう」と語り合った。今、生徒一人一人が「いのち」に見えるという。

中総体 シュートにこめる ありがとう
希望の芽 小さく咲いてる 道ばたに
はなれても ずっと友達 忘れない

今年3月11日午後2時46分ごろ、「きぼう」は、東日本付近の上を通過する予定だ。生徒たちの心が詰まったDVDは、1年後に宇宙空間へ放出され「流れ星」となる。

夢だけは 壊せなかった 大震災

空前の惨禍をもたらした震災から3年目に入る。この生徒たちのように被災地で、またこの国全体で、なお悲しみ苦しみを抱えながらも上を向こうとする人々、そしてそれに寄り添う宗教者たちがいる。