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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

心のケア・宗教の力 22(1/3ページ)

2012年11月10日付 中外日報
宗教の力――。広大な廃虚の荒野を望む丘の上には大きな御幣が(宮城県名取市の日和山で)
広大な廃虚の荒野を望む丘の上には大きな御幣が

つながり生む儀礼の力

重いもの一緒に持つこと

「ひとさじの会」の浄土宗光照院、吉水岳彦・副住職(33)は避難所などで、被災者たちから「お坊さん」としての役割をしばしば求められた。岩手県大船渡の仮設住宅で出前カフェをした時。キウイやパイナップルの入ったチョコフォンデュの甘い香りがいっぱいの部屋で、チョコが欲しい様子でもなくじっと帰らない中年女性がいた。

「お話をしてください」と言う。チョコまみれの副住職は「この泥があればこそ咲け蓮の花」という法話を持ち前の優しい声でした。怒りや愚かさにまみれた自分は周りが見えなくなっているが、そういう己に気付くことができれば他人も同じと分かり、寛容になれると。話の間にフォンデュは固まってしまった。

「チョコのようなドロドロも栄養にして美しい蓮が咲くように誰かに喜んでもらえる自分に向上できれば」。そんな意が通じ、女性は目を潤ませ合掌して帰っていった。

家族を亡くした人から胸の内を打ち明けられた時は一緒に過ごし、ただその話に耳を傾けた。そのように、ひたすら聴き、そして地元の宗教者につなぐのが、他所から支援に入った宗教者の務めだと考える。現地の僧侶たちが、亡くなった人々を送り、休みなく葬儀や供養に駆け回ることによって遺族たちの悲嘆に寄り添っていることがよく分かっているから。

時には「うちの和尚は枕経にも来てくれない」と苦情も聞くが、「被災者と一緒になって非難するのでなく、多くの犠牲者で住職が大変忙しいことをきちんと説明して差し上げるのです」。