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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 10(1/3ページ)

2012年8月9日付 中外日報
「3月11日」の命日が入った遺骨箱。行方不明の人は中が空のままのことも(岩手県釜石市の寺院で)
「3月11日」の命日が入った遺骨箱

宗派を超えて人々支え

助け合う「働く仏教会」

岩手県釜石市の日蓮宗仙寿院、芝崎惠應住職(55)は、寺の避難者の食糧調達に市災害対策本部を訪れた際、旧2中の体育館に多くの遺体が運び込まれていることを聞き、胸騒ぎがした。津波から4日後に取る物も取りあえず向かうと、旧知の民生委員の千葉淳さん(70)が案内してくれた。

床には隙間もないほどに百数十人の死者たちが横たわる。老人、親子、青年、妊婦、そして生後わずかの赤ん坊も毛布にくるまれていた。皆が泥まみれで苦悶の表情を浮かべ、そこここに見知った顔がある。「もう釜石は終わりか……」。住職は血の気が引き、自分に何ができるのか自問するのがやっとだった。

「仙寿院さんっ」。千葉さんの声にわれに返った芝崎住職は仮設の祭壇を前に読経を始めた。今見た、昔なじみの檀家たちの死に顔が次々に浮かぶ。あの日、流されるのを寺から見た老女の最後の姿も重なった。「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」。題目を唱える声に、ことさらに力を込めた。地獄の様相の体育館に響き渡るようだった。

背後には、家族を捜しにきた市民、身元確認作業をしていた警察官や市職員が並び、合掌していた。祈りの力、僧侶の役割を問われている。

だがその時、すぐ横で40代の女性が大声を上げた。ようやくのことで見つけた小さなわが子の遺体に抱き付いて泣き叫ぶ。体を揺すっても腕がだらりと伸びたままだった。かすれ声で呼ぶその名前を住職は知っていた。必死でこらえても涙があふれるのを止められず、読経の声が上ずっているのが分かった。