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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 9(1/3ページ)

2012年8月7日付 中外日報
仙寿院の本堂では、避難者も一緒に折々の勤行が行われた(岩手県釜石市で)
仙寿院の本堂では、避難者も一緒に折々の勤行が行われた

規律正しく朝の勤行も

笑いでPTSDを防ぐ

岩手県釜石市の日蓮宗仙寿院、芝崎惠應住職(55)は、寺に避難している多くの人々をどう支えるか、来る日も来る日も考え続けた。2、3日で快適な場所に移れると思っていた老人たちは、市職員が避難先として体育館を示すと、「なら畳のあるここがいい」ととどまった。700人もいれば、全く動かないでごろごろする人もいる。

3日目に住職が「皆で分担するのもいいよね」と切り出すのと、消防団員が「お寺が頑張ってんのに俺らが何もせんわけにはいかねえべ」と声を上げたのが同時だった。

次の日から、断水なのでトイレは数人が使ってから流すといったルールができ、水くみや薪調達の分担が決まり、10日後には自治会がつくられた。朝6時半に起床してラジオ体操、8時半には自衛隊が配給に来る食料を受け取る。規律正しい生活をするのが心の支えにもなると住職には分かっていた。

避難が長引き人々が精神的に参ってくると、保健師である妻友子さん(54)、長女瞳さん(25)と3人で毎晩情報交換し、心配な人を注意深く見守る。「困ったら何でも言って」ととにかく声を掛けた。

家族の行方が分からない人がその持ち物のペンが机から落ちたのは「何か悪いことの前兆ではないか」など、極度の不安やストレスを伺わせる相談が相次いだ。プライバシーがない状態でトラブルが起きそうになると住職が双方からじっくり事情を聞いて仲裁した。

そして何より、「ここはお寺。不安の中でも少しでも希望を持つためには祈ることが何より」との思いが当初から募った。高齢の女性から「夫が早く見つかるように拝んでほしい」とも懇願される。4日目に避難者の人数が少し減り、隙間もなかった本堂にスペースが確保できると、「お勤めしませんか」と呼び掛けた。