ニュース画像
多くの人が見守る中、彰義隊墓所で盛大に営まれた150回忌法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

支える思い 8(1/3ページ)

2012年8月4日付 中外日報
建物や車を巻き込み、市街地に押し寄せる津波(岩手県釜石市で昨年3月11日)
建物や車を巻き込み、市街地に押し寄せる津波

生まれ育った街が消えた

今は命を救うのが先決

目の前で濁流にのみ込まれた老女の姿を、岩手県釜石市の日蓮宗仙寿院、芝崎惠應住職(55)は忘れることができない。あの日、海抜30メートルの高台にある自坊の境内から眼下の街に海が押し寄せてくるのが見えた。

中心部の道を消防団の広報車が避難を呼び掛けながら走り回る。まだ小走りで退避場所を目指す市民。自家用車が何台も、ライトをつけクラクションを鳴らして避難しようとするが、大混乱で前へ進めない。ビル屋上のスピーカーから大音響のサイレン、防災無線が「大津波警報が発令されています。高い所で3メートル以上の津波が予想されます」と繰り返す。

実際にははるかに大きな怒涛が突き進んできていた。舌のような波の先端が道路の角を曲がり、回り込むように迫る。全速力になって逃げ惑う人々の足元で見る見る水かさが腰まで上がる。

直後、ばらばらに壊れた家々や人の乗った車を何十台も巻き込みながら、濁水とも瓦礫ともつかない巨大な壁のような塊が襲い、全てを押しつぶし始めた。逃げ遅れ転倒した人、渦に吸い込まれた人の上に建物が崩れ落ちていった。