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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

原発さえなければ 3(1/3ページ)

2012年2月25日付 中外日報
自殺した酪農家が書き残した仲間へのメッセージ。ためらいながらの記述が読み取れる(福島県相馬市で)
自殺した酪農家が書き残した仲間へのメッセージ

生き物の有り様を破壊

私らは見捨てられるのか

福島県飯舘村の前田区長、長谷川健一さん(58)の誕生日の6月11日、隣の相馬市に住む親しい酪農家仲間の「異変」の知らせが入った。山中の6キロの道を駆け付けると、友人の男性(54)は棺の中にいた。「やっぱり! お前……」。言ったきり力が抜けた。

男性は原発事故による原乳の出荷停止で苦しんだ揚げ句、40頭飼っていた牛を手放した。後に停止措置が解除されたが、経営立て直しの見込みもなく、作業小屋で首をつって自殺したのだった。

働き者で生真面目の評判。山間の牧場で毎日未明から牧草を刈り、牛を世話した。妻と7歳、5歳の息子をかわいがり、長男の入学を楽しみにして60キロも離れた郡山市までランドセルを買いに行った。だが、原乳を搾っては廃棄する日が1カ月も続いた。

放射能を心配して妻子は遠くに引っ越さざるを得なかった。「収入もないし、つらい」。それでも気さくに近所の仕事を手伝っていた。揚げ句に「気力をなくしました 6/10pm1:30」と書き残して命を絶った。