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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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いのち寄り添う ― 大震災 苦の現場から

死と向き合って 9(1/3ページ)

2012年2月2日付 中外日報
多くの犠牲者が出た老人ホームの廃虚。車椅子がひっくり返ったまま放置されていた(宮城県名取市閖上地区で)
多くの犠牲者が出た老人ホームの廃虚

苦を正面から受け止め

信仰を強めた宗教者

宮城県名取市役所のクリーン対策課長で真宗大谷派宝林寺副住職の木村敏さん(51)は一見、磊落な性格だ。だが、例えば安置所に遺体が入りきれずに入り口で列をなす悲惨な状態には、「いろんなものを見させていただきました」と口をにごす。

同課員と、同じ生活経済部に所属する計40人の市職員は、不休で泥まみれ油まみれになりながら働いた。肉親を失った者もいる。「涙も見せず、悲惨な状況にパニックにもならず偉かった」とたたえる木村さんは、責任者として現場の事情をくみ上げ、関係方面との交渉に奔走した。

市街地で遺体を収容する前に「事件事故処理」として現場検証にたっぷり時間をかける警察のやり方に、「早くしろ」と県警幹部にかみついた。「役所的」な発想だと感じたら上司の副市長まで怒鳴りつけた。

夜中まで打ち合わせをし、朝5時からの作業の前に準備があるので、役所にも安置所にも泊まり込んだ。与えられた場で徹底的に自分の使命を果たす、それは実は「宗教者」としての信念だ。

だが悲嘆に暮れながら職員に頭を下げて帰っていく遺族らの姿に、ただそばにいることしかできない無力感が募った。「何なんだ。なぜこんなに死者が」と叫びたい気持の混乱を経て、半月後に遺体が数百単位に上ったころ、非現実的な感覚にとらわれた。