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風鐸

宗教や社会の諸情勢について思いをつづるコラム。軒下につるした風鐸の音色のように、読者の心に響くことを願って……。

「キメラ」の誕生

2017年2月15日付 中外日報

人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、人の細胞を持つブタの胎児を作ることに成功したと米国の研究チームが先月発表した。人の臓器をブタの体内で作り、人に移植する医療の実現へ重要な一歩と受け止められている◆iPS細胞の研究は再生医療や治療薬開発等が期待される一方、倫理的な課題が指摘されてきた。人と動物の細胞が混じり合う「キメラ」の誕生はその一つだ。キメラはライオンの頭とヤギの胴体、ヘビの尻尾を持つギリシャ神話の怪物で、異なる種の細胞を持った個体を指す言葉として使われている◆研究では人のiPS細胞が入ったブタの受精卵1466個を使い、186個が胎児に成長。うち67匹で人の細胞が見つかった。ただし割合はブタの細胞10万個当たり人の細胞1個以下と非常に少ない。このため「実用化」は当分先だとされている◆日本では人の細胞の入った動物の受精卵を作ることは可能だが、子宮に戻すことは禁止されている。規制の緩い米国で研究が進み、文科省は指針の見直しを検討中だ◆科学・医療が長足の「進歩」を遂げ、当分先の話がいつの間にか実現していたという可能性は十分ある。iPS細胞の生みの親、山中伸弥・京都大教授は「新しい技術の是非は学者だけでなく、社会全体で決めることだ」と講演などで常々語っている。宗教者はその先頭に立って議論をリードしてほしい。(飯川道弘)