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<連載・断面>浄土宗の現状と課題 第2回

2015年3月27日付 中外日報

教養主義から専門主義へ

講習会低い出席率

浄土宗では、教師を対象にした講習会が幾つも開かれている。各教区で実施される普通講習会や、全国を8地区に区分した地方教化センターなどで行われる教化高等講習会をはじめ、布教師会の研修会、法式講習会、さらには浄土宗総合研究所が主催するシンポジウムなどもある。

2007年に実施された浄土宗宗勢調査では、住職のうち過去1年間に教化高等講習会に参加したのは29・07%、普通講習会は49・85%と低く、講習会などに出席しなかった割合は3割を超えている。

ある宗議会議員は「普通講習会に行っても、いつも同じ顔ばかり。来ない人にこそ来てほしいのに」と嘆く。

一方で、東海地方のある住職は「何よりも、受けなければいけないと思わせるような内容の研修が必要だ」と、教師が求めるものと講習会の内容に開きがあるとする。

山本正廣・教学局長は「参加しようという意欲は、講義の内容によっても変わってくるのではないか」と語り、「教養主義から、専門主義へ」がキーワードという。

現場重視の内容に

今年1月、総本山知恩院を会場にした教化高等講習会のテーマは「知っておきたい葬送儀礼と年中行事」。通夜・中陰・年回・年中行事の布教の基礎を学ぶ講義などがあり、前年に比べ100人以上多い約250人が受講した。教化の最前線、現場で求められているニーズに合った講義内容が、参加者の増加につながった。

山本教学局長は「教化高等講習会では、かつて著名人を呼んでの講演など教養主義的側面があったが、近年は僧侶として現場で必要になる知識を習得するための講義が組み込まれるなど、専門主義・現場主義的傾向が強まっている。それに従い、参加者も増えている」と話す。

2016年に始まる新研修の学習プログラムの策定は、昨年末に立ち上げられた教育・教化法制委員会の専門委員会で進められている。受講者が主体的に教師の在り方を考える「実践僧侶論」などが検討されている。

講師の育成が課題

新たな研修の理念や方向性は、5月に開かれる教区長・教化団長会議で説明され、研修実施に関連する議案が秋の定期宗議会に提出される予定だが、来年4月のスタートまでにはクリアすべき課題は少なくない。

新設される教化研修会館には、教学院や布教教化について研究する総合研究所の事務室も設けられるが、講師陣の養成が急がれている。今年2月に開かれた教育・教化法制委員会で、田中勝道委員は「受講者は、数十年にわたり教化に携わっている方。講師も相当勉強しなければ、教壇で立ちすくむことになってしまう」とくぎを刺した。

田中委員は「研修は、講師が大学での研究の成果を発表する場ではない。最前線に立っている住職の方々に、教化に生かしていける話題を具体的に説くことができる講師、学んだことを檀信徒教化に沿って話せるような目を持った人材を育てなければならない」と強調する。

研修会館での受講が難しい教師への対応も必要だ。教育・教化法制委員会では、全国で開かれている既存の講習会に統一した内容の講義を組み込み、地方での受講を可能にする他、兼職住職のために通信教育を導入することも検討している。

「自信」を培いたい

前出の東海地方の住職は、新しい研修が「自らの存在を確かめるようなもの、浄土宗の僧侶でよかったという実感が養われるものであってほしい」と願っている。僧侶が称える「自信偈」は、「自信教人信」から始まる。教えをまずは自ら信じ、さらに他へと伝えること。研修により、その信の部分が培われてほしいと望む。

だが、「自信」は研修や講義だけで培うことができるのだろうか。