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<連載・断面>浄土宗の現状と課題 第1回

2015年3月25日付 中外日報

全教師を対象に再教育

16年度から新制度

浄土宗は、2016年度から全教師対象の新研修制度を始め、教師再教育に本腰を入れる。江戸時代以降の寺檀関係が崩れ、僧侶と檀信徒との関係は大きな変化を遂げた。「門には、いつも結界がされている」「法要後の法話もない」といった檀信徒の不満も聞こえる。近年の複数の宗教意識に関する調査によると「仏教」への関心が高まってはいるが、僧侶への信頼は低い。

浄土宗は実社会に対応できる僧侶の育成を目指すが「僧侶自身の信仰を培うことが大切だ。研修だけでは、道心のある僧侶はつくれない」といった声もある。

理想の教師像を目指して、模索しながら進む宗門の姿を追う。

社会的信頼が低下

「檀信徒と接する日常そのものが、教化活動となるような教師の育成を目指し、一歩一歩着実に歩みを進めている」。11年の就任以来、僧侶の意識改革と資質向上を目標に掲げる豊岡鐐尓・宗務総長は、3月の定期宗議会冒頭の執務方針でこう語った。

1872年の「肉食妻帯蓄髪等勝手たるべし事」の太政官布告以降、僧侶の在り方は大きく変わった。それから140年余り経た今、寺院の私物化などが問題となり、僧侶への社会的な信頼が低下している。寺檀間の金銭トラブルなど寺院で繰り広げられる不祥事はマスコミの格好の餌食となり、僧侶への風当たりは厳しさを増している。

宗教界に広がる危機感を背景に、浄土宗は新たに設置する「教化研修会館」を拠点に、全教師約1万1千人を対象にした「10年ごとの研修」をスタートさせる。中央研修の他、全国各地で統一した内容の講座を受講できる「教化研修機構」の構築が始まっている。3月の議会では、中央研修の拠点となる研修会館の施工費などが盛り込まれた特別会計予算案が可決された。

「10年ごとの研修」が宗門で語られだしたのは、10年余り前のことだ。当時、水谷幸正・宗務総長のもと、宗門の中・長期計画を定める「基本構想行動計画策定会議」が開かれていた。2003年に発表された同会議の中間報告書では、教師資格取得後に研修義務がない現状が問題となり、受講しなければ「各種申請の不受理や僧階進叙の不可」といった措置を取ることで、義務化した研修を実施すべきだと提言した。そして、「教師10年ごとの研修を実施するか否かが、宗門の将来を左右する」と訴えた。

僧侶の教育や教化施策を検討する教育・教化法制委員会では、中間報告を受けて部会を設け、教師の再研修を議論したが、制度構築に向けた動きが本格化するのは、研修会館の設置が表面化してからのことだった。

宗内の合意不十分

昨年5月、豊岡宗務総長は、宗祖法然上人800年大遠忌事業費のうち、未執行のまま積み立てられていた施設建設準備金10億円を活用し、総本山知恩院山内の塔頭源光院を改修して研修施設にする方針を示した。

11年を中心に実施された大遠忌事業では、教師養成・再研修が重要課題とされ、総額37億3千万円の事業費の4分の1余りを占める10億円で、宗立研修施設の建設が構想された。だが、施設建設だけが先立った感のある計画について「具体的な建設・運営計画が明示されていないので不安がある」といった否定的な声が多く、建設計画はいったんは凍結された。

昨年、総本山知恩院から源光院を借り受けることができる可能性が出てきたことから、再び浮上した研修施設設置案についても、宗議会では「施設がどのように使われるのか、全体的な資料が不足しているのでは」といった意見が相次いだ。また、新しい研修制度についても「最初に10億円ありきで、話が進んでいった」との不満もくすぶっている。

だが、研修の改革に異議を唱える宗門関係者は少ない。各種の研修会に参加する教師の顔触れは固定化されており、現行の制度だけでは宗門全体の教師の資質向上は図れないとの思いが広がっているためだ。

研修施設について宗門のコンセンサスが十分とは言い難い中で、全教師を対象とした研修の実施というこれまでになかった試みが始まろうとしている。