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<連載・断面>日蓮宗の現状と課題 第3回

2015年2月27日付 中外日報

「本山巡り」に胸躍る

「全ての本山で御朱印をもらうのが目標です」。東京都大田区の本山大坊本行寺で、リュックサックを背負った60代の女性が朱印帳を開いて見せた。すでに40以上の本山の御朱印が押されていた。「本山は日蓮宗を代表するお寺。私は日蓮宗の檀家だから、一生のうちに一回は全部参りたい」と話した。

檀信徒らのこうした思いに応えるため、宗門の布教紙を発行する(株)日蓮宗新聞社は今年1月、「57本山御朱印巡りセット」を発売した。貫首染筆による全本山の題目が57枚の紙に印刷され、全ての御朱印を集めると表装して掛け軸にもできる。大本山池上本門寺の参道にある、信行用品や宗教書を販売する同社の店舗でも檀信徒らの関心が高いという。

歴史の重み実感

神奈川県鎌倉市の本山本覚寺の永倉嘉文貫首は「檀信徒が実際に本山を訪れ、その歴史を肌で感じてもらうことが何より。言葉で訴えるより何倍も本山の重みが伝わる」と話す。鎌倉は日蓮聖人が『立正安国論』を書き、辻説法をした地とされ、神奈川県内にある五つの本山を回る団参も盛んだ。

山静教区(山梨県・静岡県)では、教区内にある15本山を巡る団参プロジェクトを数年前から行っている。貫名英舜・静岡県中部宗務所長は「山梨の総本山身延山久遠寺をはじめ、地元にこれほどの本山があることを知ってもらう機会となり、信徒の皆さんもそれぞれの本山の歴史を重く受け止めている」という。

各寺院や教区レベルでは、こうして檀信徒の意識を高めようとの動きも見られるが、まだ全国的な広がりにはなっていない。僧侶・檀信徒の中には、菩提寺さえ守れればよいという人が多いからだ。

大切な参拝意欲

ある末寺の住職は「信心深い人は今もいて、勧募などにも協力してくれる。でも自分の家族や祖先の墓がある菩提寺止まりで、本山が大切だとまでは思いが至らない。宗祖の教えが現代まで伝わるのに本山が大きな役割を担っていたことを、我々僧侶がきちんと説明してこなかったのかもしれない」と反省する。

また、本山側の受け入れ姿勢が参拝意欲を減退させているとの指摘もある。ある本山の檀家は「本山にいる僧侶はみんな、朝来て夕方帰る勤め人。落ち着いて話せる雰囲気ではなく、人と人の触れ合いがない」と嘆く。

また「貫首は猊下と呼ばれて雲の上の人。高齢だからかもしれないが、めったに顔を見ない」との不満も聞かれた。

中には早水日秀・本山妙本寺(鎌倉市)貫首のように、自ら境内を掃き掃除して参拝者と言葉を交わす機会をつくろうとしている貫首もいるが、そうした例はまれだ。

信念興起すべし

本山の現状について持田日勇・本山藻原寺(千葉県茂原市)貫首は「一カ寺一カ寺の宗内寺院でこつこつとやっている布教、伝道の成果をまとめ上げて、そしてさらに発展させていくのが本山で、その代表である貫首は社会との懸け橋にならなければいけない。だが多くの本山は檀家回りをする普通の寺院と同じになっている」と嘆息。「やはり約5500カ寺の宗門に57の本山は多過ぎる。20くらいに減らせばいい。貫首の資格を厳しくして、選挙で選ぶべきだ。そして檀信徒が納得できる本山の姿をつくり上げ、宗門全体で格護する体制を築いていくべきだ」と主張する。

宗外から見れば、本山はその宗門を代表する寺院。宗憲では「信念興起の依処として本宗の全員が顕彰護持する」とうたわれているが、数ある本山がかつての威容を保つのに苦慮している現状は、信念興起の依処として十分には機能していないことの表れでもある。

(おわり)