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<連載・断面>天台宗の現状と課題 第1回

2014年12月10日付 中外日報

人材育て、布教力向上を

天台宗の宗祖伝教大師は、僧侶の心構えとして、「道心の中に衣食あり、衣食の中に道心なし」という言葉を残している。天台宗は現在、祖師先徳鑽仰大法会(2012~22年)を奉修中で、特別記念事業の国宝・根本中堂改修(総工費約50億円)のため数十億円もの膨大な資金を集めようと躍起だが、本当に大切なのは人々の道心を育む教化活動だ。しかし、教義や法儀が未熟で法話も上手にできないなど僧侶の資質低下が問題となっている状況ではそれもままならず、人材育成への取り組みが喫緊の課題となっている。

大法会の意義

今年10月の第131回天台宗通常宗議会の初日。改選後の初の通常宗議会とあって、緊張した面持ちの議員たちは、半田孝淳座主の開会式の「お言葉」に耳を傾けた。

「宗徒一人一人が、現代社会に祖師先徳の教えをいかに敷衍していくか真剣に考えなければなりません」

「お言葉」は、第2期の事業計画案や予算案が上程されるのに際し、議員らにあらためて大法会の意義の再確認を促すものだった。

宗派執行部の一人はこの言葉を襟を正して聞いた。「お座主様がおっしゃられているように祖師先徳の教えをもって檀信徒教化、布教活動を展開しようとしている寺院や僧侶は少ないのではないか」と危惧するからだ。

そして、「現状の檀信徒に頼るだけの寺院運営では、少子高齢化、若者の寺離れなどで、教勢は停滞、下向の一途をたどり、寺院、教団の存続もままならなくなる。このことは天台宗の将来を左右する大きな問題だ」と、言葉を継いだ。

「お言葉」を重く受け止めた議員も少なくない。村上圓竜議員は「マスコミ等で『終活』という言葉がよく登場するが、墓地、葬儀に対する世間の意識が変化し、寺院を取り巻く環境が厳しい状況にある」「しっかりとした檀信徒教化こそが必要。これは一寺院、一教師の問題ではなく、宗門がリーダーシップをしっかりと発揮して取り組む問題であり、宗団を挙げて檀信徒教化に傾注していかねば」と強調する。

そのために不可欠なのは人材育成だ。

伝教大師は『山家学生式』の冒頭で、「国の宝とは何物ぞ、宝とは道心なり。道心ある人を名づけて国宝と為す。故に古人言わく、径寸十枚、是れ国宝にあらず、一隅を照す、此れ則ち国宝なりと」と掲げ、人材育成の大切さを説いている。

発心なき世襲

「昔は小僧として寺に預けられて僧侶になる前に厳しくしつけられ、基礎を学んでいた。かなり以前から寺院の世襲化が問題となっていたが、跡継ぎとして甘やかされ、発心もなく僧侶になる人もいる。そのため檀信徒とうまく接することができずに寺檀紛争を起こしたり、寺院を私物化するという勘違いも起きる」と、「小僧経験」のある近畿地方の50代の住職は嘆く。

このような現状を憂慮した宗門は昨年、僧侶の資質向上、再教育の場として教師研修会を設置した。また、布教力の低下への対応として中央布教師研修会など、組織的な布教師の養成も始まった。

この取り組みに対して、宗機顧問の稙田惠秀・霊山寺住職は「天台宗の未来のため、人材の育成をもっともっと充実させてほしい」と期待する。

危機の自覚を

来年4月から始まる大法会の第2期では、巨額の経費が必要な根本中堂の改修にばかり注目が集まっているが、人材育成などもっと総合的に宗門全体の未来を考える大法会事業にしなければならない。

座主の「お言葉」にあるように、内局、そして宗議会に求められているのは、そのことへの自覚だ。

天台宗では、寺院の世襲化に一石を投じる意味も込めて、数年前まで在家から僧侶を公募していたことがあるが、今は行われていない。原因は一体何なのか。