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<連載・断面>曹洞宗の現状と課題 第1回

2014年11月21日付 中外日報

同会派で議席争う選挙

2会派同数制で

今年9月、曹洞宗の宗議会議員総選挙が行われた。第5選挙区(茨城・千葉県)の投票所となった寺院には、投票日の朝から次々と宗侶が集まり票を投じたが、50代のある僧侶は「なぜ、同じ会派同士が争う選挙なのかが理解できない」と首を傾げた。背景には、意中の候補者だけではなく、自らが支持もしていない候補者の名前を投票用紙に記入しなければならないという曹洞宗独特の選挙制度の問題がある。

同宗には、二つの大本山をそれぞれ支持する宗政会派がある。大本山永平寺系の有道会と大本山總持寺系の總和会だ。選挙は全国32選挙区(72議席)で行われる。両会派36議席ずつで固定されているため、選挙は必然的に同じ会派内で議席を争うことになる。

現行の制度が施行されたのは35年前の1979年。それ以前は両会派の立候補者の間で激しい選挙戦が繰り広げられた。当時をよく知る藏山光堂・總和会顧問は「選挙には膨大な費用が掛かった。金品授受などは当たり前で、とにかく現金を撃ち合った」と明かす。別の宗議会議員経験者も「本当にひどい選挙だった。誹謗中傷もあったし、檀信徒にもいい影響はなかった。議員は議会どころではなく、選挙に勝つための活動に終始していた」と振り返る。

その反省から両会派の立候補者が争わないように、それぞれの議席を全ての選挙区に同数の、計36ずつを割り振る「同数制」が導入された。この際、数年後には見直すことになっていたとされるが、87年に「選挙制度特別委員会」が設置され、選挙規定の再検討が行われたものの、いまだに改正には至っていない。

連記制の改革は

両会派とも選挙制度の改定を避けていたわけではない。有道会は選挙制度について議論を重ねてきた。1票の格差や同数制、投票方法などが主な論点だ。今年10月に千葉県内であった関東地区大会、11月に岩手県で開かれた東北地区大会でも選挙制度が焦点となった。

また、2010年6月に開かれた第110回通常宗議会では、有道会幹事長の髙松祖學議員(当時)が、同会議員28人の発議によって上程された選挙規程の一部変更案を説明している。同案では、選挙制度が抱える諸問題解決の第一歩として、投票の際、1枚の投票用紙に両会派の立候補者の名前を連記する2名連記制の改革を求めた。

現在の制度では、定数2人(両会派から1人ずつ)の選挙区では、一方の会派(系別)が選挙戦になった場合、もう一方の会派は立候補者が1人でも有権者は投票に参加し、1枚の投票用紙に両会派の立候補者2人の名前を書く。面識もない他会派の立候補者でも、その名を書かなければ投票自体が無効になる。

これに対して、10年の宗議会で髙松幹事長は「選挙人の自由な意思を侵害し、自由な投票権が担保されていない。健全な投票行動が阻害されている、規程上の問題を放置したままとなっている」と批判し、2名連記の変更を求めた。

だが總和会の宮前正道議員(当時)が「(同数制は曹洞宗を永平寺系、總持寺系に分裂させないために)先哲が心を同じくしてなし得た偉業である。拙速な選挙制度改革は許されない」と反対。有道会議員に欠席があったこともあり、總和会の反対で改正案は否決された。

当時、有道会会長だった鈴木秀一・正続寺住職は「總和会は前向きじゃなかった」と振り返る。髙松氏も「總和会議員も何人かは、水面下で単記制に理解を示していた。だから上程すれば、もしかしたらという思いもあったが、それは甘かった」と、悔しさをにじませる。

不満の声上がる

そもそも總和会では会派間で議席を争った旧制度の選挙で大敗した苦い経験があり、選挙規程改正について議論することが長い間タブー視されてきた。そして会派内では、連記制のメリットが強調されてきた。總和会のベテラン議員は「選挙になれば、有道会の僧侶(有権者)に、自派の候補者へ投票を呼び掛けることがある。有道会からの得票が当選の鍵になることもある」と説明する。相手の理解を得ることで、選挙を有利に戦うことができ、会派間の交流や無関心になりがちな相手の政策を知る機会も生まれ、宗門の活性化につながるとも指摘する。

しかし、実際、この制度で宗門が活性化したとは言い難い。近年、宗侶から上がる選挙制度に対する不満の声を受けて、總和会議員らも選挙制度についての議論ができる空気が生まれつつあり、同会の議員も参加して選挙制度の問題を議論する勉強会が開かれるようになっている。