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<連載・断面>信仰運動 第5回

2014年10月24日付 中外日報

「実践運動」、教区・末寺が主体的に

浄土真宗本願寺派・東京教区作製のリーフレット『自死に向き合う』が、現場で活用されている。「×それは気にし過ぎですよ ○お辛そうですね」といった発言例など、遺族と接する際の注意点が簡潔にまとめられ、さまざまな場面で重宝される。

広がらぬ社会活動

同教区では、2012年に始まった「御同朋の社会をめざす運動」の重点項目に自死問題を掲げた。この運動は通称を「実践運動」としており、聞法で自らの内面を高めるだけでなく、社会と積極的に関わっていこうとの狙いがある。そして各教区や組ごとに目標を定めて、上意下達ではなく、各自が主体的に取り組むことが大きな特徴となっている。

「差別問題や平和活動に熱心な一部の人たちの運動で、自分たちが加わるものではない」。実践運動に先立って展開されてきた「基幹運動」では、そんな意識があった、と関東のある僧侶は振り返る。

同派の運動は二つの流れに端を発している。一つは、大谷光照門主(当時)が教団の形骸化に危機感を示したことを受け、僧侶・門信徒の全員聞法・全員伝道を目指して1962年に始まった「門信徒会運動」。もう一つは、戦後間もない50年から僧俗有志が部落差別問題に取り組んできた同朋会を引き継ぐ「同朋運動」。

両運動は80年に「基幹運動」と改称して統合されたが、差別や平和に関する活動が目立ち、社会的活動が大きな広がりを見せるには至らなかった。

テーマ自由で促す

こうした実態を踏まえ「実践運動」では、宗門外への発信や社会貢献への志向性を打ち出すとともに、具体的な活動内容はそれぞれが自由に決めることにして参加しやすくした。

「わあ、きれい」。おわんのふたを開け、鮮やかな料理を目にした参詣者が感嘆の声を上げる。広島県北広島町の山間部にある淨謙寺。地元の野菜を使った手作りイタリアン精進料理が評判を呼び、キャンセル待ちも出るほどだ。料理の手伝いなどで人との縁が深まる実践活動の好例として、宗派のホームページで紹介されている。

運動を促すため宗門は当初、参考例として災害支援・環境問題・日常の寺院活動など8項目を挙げた。現在、各教区・組で設定された目標で最も多いのが、「日常の寺院活動」だ。

これを「本山にアイデアがなく、各僧侶も何をしていいか迷っている」と見る向きもあるが、宇野哲哉・重点プロジェクト推進室部長は「これまで行ってきたことも、少し観点を変えれば社会的な活動になる」と話す。例えば月参りで門徒を訪れるとき、ただお経を読んで帰るのでなく、独居老人の安否確認といった視点を持っていれば、社会的活動に広げるきっかけにできる。「足元を見つめ直すことから始め、お寺を地域に開くことになれば」と宇野部長は期待する。

すでにさまざまな実践報告が届いており、ホームページには合唱団結成や子ども向けイベント開催など50以上の事例が並んでいる。さらに数を増やして12月にも冊子としてまとめる予定だ。

若い僧侶に期待

運動の始動からまだ2年。「各末寺の住職に趣旨をよく伝えることが課題」と、松本智量・延立寺(東京都八王子市)住職は指摘する。手探りの部分はまだ多いが、「基幹運動の時とは空気が違う。特に20~30歳代の若い僧侶たちから、何かしようという感じが伝わってくる。それが実行に移されるのに数年かかるかもしれないが、期待していいと思う」と肯定的に受け止めている。

“葬式仏教”と批判され、宗教者の社会的活動は長年課題とされてきた。本願寺派の自死問題リーフレットは他宗でも評価され、使われている。そのことからも分かるように、各宗派が信仰に基づいた運動を通して社会との接点を模索し続けている。

(おわり)