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<連載・断面>信仰運動 第4回

2014年10月17日付 中外日報

長期化でマンネリ、どう見直すか

「これまで運動を広げるための種まきをしてこなかったのではないか」。浄土宗総本山知恩院の信仰運動「おてつぎ運動」の見直しに向けて、今年2月に開かれた教区推進委員の会議で厳しい声が相次いだ。開始当初は目新しかった運動も、長期化に伴いマンネリ化しているとの声も多い。各宗の運動は、先師が積み上げてきた成果を守りつつ改革するという困難な課題に直面している。

教区に推進委設置

知恩院では、2011年の元祖法然上人八百年大遠忌後、北川一有・同運動本部長(知恩院執事長)の主導で、形骸化が指摘されていた運動の見直しに着手した。同運動の重要事項を審議・議決していた代議員会に代わって、各教区に教区推進委員を設置。全国から集まった委員は、「50周年」「運動綱領」「信行奉仕団」「諸行事」などテーマごとにつくられた小委員会で、見直しを進めている。

1967年に始まった運動には、総本山だけでなく各末寺護持の中心となる篤信者を育成しようとの目的があった。祖山で寝食を共にしながら法話を聞いたり清掃したりする「信行奉仕団」などで檀信徒の信仰を培う他、乳幼児のいる母親同士が語り合う「サラナ親子教室」を開催し、各寺院のパイロット事業とするなどしてきた。

しかし、知恩院の護持運動だと誤解する僧侶が宗門内にも多くいた。各末寺の檀信徒養成という目標が知られていないことが、参加者伸び悩みの原因とも指摘される。加入寺院数は約4千カ寺と、全7千カ寺の半数強にとどまる。また、「西高東低」といわれる教区間での取り組みの温度差も長年課題とされたままだ。

教区推進委員の会議では、「各教区に運動本部が積極的に出向いて、説明やPRを行うべきだ」との注文が出された。堀田定俊・おてつぎ運動副本部長は「個々の寺院でできない教化をするのが、おてつぎ運動の原点だ。こちらから全国に出向いて、本来の意義を伝えていきたい」と運動活性化に意欲を見せる。

企業や地域へ輪を

同朋会運動(真宗大谷派)が52年、おかげさま運動(臨済宗妙心寺派)が41年にわたるなど、各運動とも長く続けられており、形骸化という悩みは天台宗でも同じだ。

入り口に芸能人の手形とサインが並ぶ浅草公会堂(東京都台東区)。歌舞伎や漫才のひのき舞台として知られるこのホールが年に1日、宗教空間に変わる。今年で第44回を数える天台宗東京教区の「一隅を照らす運動」大会だ。法要が営まれ、満席の会場に僧侶の声明と雅楽が響き渡る。

天台宗は69年に「一隅を照らす運動」を開始。大阪万博開催、東名高速道路開通と、高度経済成長期を迎え日本が元気な時代だった。物があふれる表面的な豊かさに対して、「本当の心の豊かさを」と訴え、運動は始められた。

全国に教区本部や支部が組織され、初代会長に就任した作家の今東光・中尊寺貫首は辻説法も行った。百万巻写経や社会福祉活動など、さまざまな実践活動を展開し、87年には関連して「比叡山宗教サミット」も開いた。

横山照泰・一隅を照らす運動総本部長は「天台宗の信仰そのものであり、代名詞ともいえる運動」と評価するが、発足から約45年を経て「各地で開かれる大会が法要と講演で定型化し、内輪の行事になっている」との認識もある。近年では、参加者数が各寺に割り当てられるケースも目立つようになり、「人集めに毎年苦労している」との声も上がる。

こうした状況になったのも、「教団挙げての歴史ある基幹運動だから、誰も大きな声を上げて改革を訴えにくい」(兵庫県の僧侶)空気が宗内を覆っていることが大きな理由だった。

次の50周年大会をより開かれ活気あるものとすべく模索が続けられている。横山総本部長は「運動は、宗内だけでなく、広く一般に通じるもの。内輪だけの取り組みにならないよう、一般企業や地域社会にも積極的に声を掛けて参加者の輪を広げていきたい」と話すのだが……。