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<連載・断面>信仰運動 第2回

2014年10月10日付 中外日報

「おかげさま運動」、浸透度なお課題

「このままでは見舞金を受け取れない被災檀信徒が出る」――。東日本大震災発生から間もなく開かれた臨済宗妙心寺派特別災害対策委員会で、委員らは頭を抱え込んだ。同派信徒組織「花園会」に登録されていない檀信徒が多数被災したという現実に直面したためだ。花園会の信仰運動「おかげさま運動」は、同信同行の互助も重要な柱。それが部分的に機能しないことになってしまう。

末寺には抵抗感も

会員登録が檀信徒の実数を適正に反映していない、とはかねて指摘されてきた。寺離れの時代に登録会員世帯数が毎年千世帯ほど増え続け、2012年度には35万世帯に届いたが、「実数とはかなり懸け離れている」というのが鮎川博道・花園会本部長の見方だ。

花園会員名簿の本山登録はかつて宗議会でも議論となったが、関西のある住職が「本山に会員名簿を提出してもメリットはない。賦課金の基準になるだけでは」と話すように、末寺の中には抵抗感もある。いまだに檀家数の実態と異なるとみられるのは花園会の組織の弱さを示し、信仰運動の理念としての「おかげさま」の浸透度がなお十分でないことの指標とも考えられる。

「花園会」の前身である「花園教会」は1884(明治17)年に発足。大名、武家などを主な外護者とした宗門が、神仏分離後の危機の中、盤珪禅師や白隠禅師以来の大衆教化路線を正面に打ち出した。

第2次大戦後、寺院ごとに花園会が設けられ、1952年には花園会本部が設置された。「家の宗教から個の宗教へ」を意識し、世帯数の会員登録を個人単位にしようとする試みもなされ、会員の日常指針となる標語「生活信条」などが制定された。

社会との関係意識

その延長で73年、妙心寺開基花園法皇の御宸翰にある「報恩謝徳」の精神を基に始められたのが「おかげさま運動」だ。ただ、禅の「無」と信仰の活動とがどうつながるかは見えにくい。早くも2年後には「理念が明確でない」との批判が出始め、運動の必要性を問う声も上がった。

こうした困難を抱えながらも、「おかげさま運動」は社会との関連を強く意識した信仰運動としてさまざまな活動を重ねてきた。東日本大震災では、本山でボランティア研修を受けた花園会員が被災地でがれき撤去など支援活動に従事した。被災会員のため、6億円を目標に互助見舞金を募り、ペットボトルに毎日少額ずつためることも提案された。

「ペットボトル募金を持ってきてくれた檀家さんもかなりいましたよ」と語るのは、花園会本部長経験者の鈴木眞道・富春院住職。

目標達成率は96%。だが募財の呼び掛けが会員まで届かず、寺院が肩代わりした所も多いとみられている。鈴木住職は「伝統仏教の信仰運動にそれほど飛躍的に成果は出ない。じわじわと浸透させるしかない」と言う。

会員増え水路拡大

9月末には会員登録の電子データ化が完了した。伝統仏教の大宗派で各寺院の檀信徒名簿をこのような形で把握している所は他にない。檀家の実態に対応して会員登録が増えれば、教化誌『花園』の配布をはじめ、臨済禅の教えを伝える水路もそれだけ広がる。電子データ化を立案した花園会前本部長の林学道・霊雲寺住職は言う。

「宗門の未来を考えれば、寺は先祖祭祀だけでなく教えを学ぶ場になるべきだ。宗門は臨済宗の教えをもっと分かりやすく説く努力が必要だが、正確な会員登録はその基盤になる」

電子化を機に呼び掛けた会員名簿更新によって、会員数は1年半で約1万4千世帯増えた。しかし、禅的な「無」をどのように分かりやすく伝えるかという課題は残されている。