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<連載・断面>信仰運動 第1回

2014年10月8日付 中外日報

「同朋の会」、真の信心回復へ

仏教各宗派は1960年代から、檀信徒の信仰を深め寺院を活性化させる“信仰運動”をこぞって始めていった。「同朋」「一隅を照らす」など、宗派の特色を端的に示す運動名を掲げ、全国寺院に展開を働き掛けた。それから半世紀。運動は継続されているものの、内容のマンネリ化や、当初の理念の希薄化が進んでいるとの指摘もある。さまざまな信仰運動の歴史と課題を追った。

「原発を再稼働するかどうかは信仰的課題」「何の行動もしないことと仏教的中立とは違う」。熱い議論が交わされているのは、真宗大谷派・真宗本廟(京都市下京区)の宿泊施設「同朋会館」。参加者の肩には「真宗本廟奉仕団」と染められたタスキが掛かる。

教学学習と座談会

大谷派では62年から「同朋会運動」を推進してきた。「家の宗教から個の自覚の宗教へ」をスローガンに、僧侶・門徒一人一人が真の信心を回復することを目指す。具体的活動の一つが奉仕団だ。

奉仕団は寺院や組・教区ごとに2泊3日ないし1泊2日を基本に行われ、本山の御影堂や阿弥陀堂への参拝に感激する人も多い。原発に関する議論のように、社会問題をテーマに参加者を募ることもある。晨朝参拝や夕事勤行がスケジュールに組み込まれるのはもちろんだが、中心となるのは教学の学習と座談会。親鸞聖人の教えについて、座長的役割を務める教導を囲んで語り合われる。現在も年間約8千人が奉仕団に参加する。

戦後の宗門には、宮谷法含・宗務総長(当時)が「宗祖の遺徳の上に安逸をむさぼり、真の仏法者を見いだせない宗門になっている」(56年)と憂えたように、信心を基とする僧伽に生まれ変わるべきだとする高い目的意識が芽生えていた。宗門体制の改革派と保守派が対決して「お東紛争」に発展した歴史もあったが、今もこの理想は継承され、「寺を強くする運動」ではなく「純粋なる信仰運動」だとしばしば強調される。

その実現のため各寺院や組でも、教学の学習と座談会を主とする「同朋の会」の結成が進んでいる。東京都世田谷区の存明寺では毎月、聞法と座談の会を「樹心の会」と称して開く。僧侶による法話だけでなく、門徒も講師を務める。20~30人ほどが参加することが多く、数人のグループに分かれて話し合う時間も設けている。酒井義一住職は「宗門が信仰運動を推進して会の結成を呼び掛けていたからこそ始められた」と振り返る。

半世紀後まだ3割

同派がほぼ10年ごとに行っている教勢調査の第7回(2012年)では、寺院参拝者が減少傾向にあることを認めつつも、僧侶と門徒が直接コミュニケーションを図れる「同朋の会」が、減少の食い止めに貢献していると分析した。

だが現在、運動の意図は浸透してきたとされるが、「同朋の会」が結成されている寺院は、運動が半世紀以上たってもまだ約3割にとどまる。紛争時に内局で担当の参務だった不破仁・長圓寺(岐阜県大垣市)前住職も「宗門という巨大組織では門徒まで伝えるのに困難が伴う。念仏に生きる門徒はまだ少なく、僧侶が範を示していかねば」と語る。運動の財源確立を目指して「同朋会員志金」を設けたが、院号授与・本廟収骨の賞典がある「相続講金」への懇志には遠く及ばないという現実もある。

里雄康意・宗務総長は、常々「宗門は真宗同朋会運動を推進することをいのちとする教団」と述べている。「まだ始まって五十数年。これから、より広く展開されていく運動でなければならない」と話す。同派では、今年度から「同朋の会」の結成を積極的に呼び掛けるウエイクアップセミナーを各教区で始めるとともに、来年には情報交換をスムーズにするための機関として真宗教化センターも開設し、僧侶、門徒、地域住民の、参加型の教化体制を目指すことにしている。