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<連載・断面>新宗教③

2014年7月16日付 中外日報

信仰の継承時代に合った方法模索

「支部長に定年を設けたら、なり手がいなくなった」。ある教団の支部で、こんな嘆きが聞かれた。この教団では数年前、役職者の若返りを図ろうと定年制を導入したが、担当してくれそうな信者のほとんどが定年の75歳を超えていた。もちろんそれ以下の信者はいるが、会社勤めをしていて時間が取れないといった人が多く、子・孫への信仰の継承が課題となっている。

日本の総人口に占める65歳以上の割合は4分の1。多くの教団は信徒の年齢構成を調べていないとしているが、年齢が上がるほど信仰を持つ人の率が高いことからも、各教団信徒の高齢者の割合は国と同様かそれ以上と考えるのが自然だ。

大阪府内のベッドタウンに住む山田正行さん(仮名、26)は、新宗教の信仰3世。子どものころ母親に手を引かれて何度か教団本部に行ったこともあるが、今は「自分でも信者といえるかどうか」。

母方の祖父母が篤信者だったが、5人の子どものうち今も信仰しているのは山田さんの母親と叔母の2人だけ。「祖父母は子どもたちに信仰を強要することはなかったそうだ。母親も僕たちにそんなに信仰しろとは言わなかった」。家族みんなで本部参拝してはいたものの、誰も熱心な信者にはなっていない。

「母は仕事が一段落したらもっと教えを学びたいと話している。自分の信仰を大事にするのと同じように、子どもの信仰の自主性も大切にしているのかもしれない」と山田さんは母の思いを推し量る。

宗教社会学が専門の石井研士・國學院大教授は「入信した人には強い動機があるが、その子どもにはモチベーションがなく、信仰への熱い思いが伝わらないのも当然」とみる。「職業も結婚相手も自分で選ぶものという教育を受けてきた今の若い人たちにとって、信仰に関しても親から継承するという発想はない」と、日本人の考え方が変わったことを指摘する。

厚労省の国民生活基礎調査(2012年)によると、全世帯のうち三世代同居は7・6%と、1992年の13・1%から大きく減少。反対に単独世帯25・2%、夫婦のみ22・8%と、親子が同居していない家庭が半数近くを占める。家の構造自体が変化し、日常生活の中で親から子・孫へと信仰を伝えることが難しくなっている。

そんな中でも辯天宗の浜松教区では、親子連れの姿が教会でよく見られる。教理を学ぶ「お運び」に、幼い子どもを連れて来るのも日常的な光景だ。前教区長の佐藤文俊さんは「遊んでいても、耳にはお経が入っている。小さい時にお運びに接していることが大事」と考える。

もちろん時代の変化はある。塩谷満寿美・教区長は「昔は親子が一緒にお百度を踏んだもの。そうするうちに、親も子も辯天さんの存在を理解した。今の子は親と別行動していることが多い」と話す。それでも親子の信者が減らないのは、「時代は変わっても人が救いを求める思いに変わりはない。何か困難に直面した時、ご宗祖さまの残された救いの手だてを示せば子どもたちにも必ず伝わる」と、教えの重みをかみしめる。

すでに教団として家庭内での、そして「家」を離れた形での信仰の後継者育成に力を注いでいる所もある。大本では青年部発足50周年を迎えた今年を新たなスタートと位置付け、「家族そろっての信仰」に励むよう呼び掛けている。家庭内で教えについて話し合ったり、親子で農業体験を通じて天地の恩に感謝する心を養うことを提案。また各地で「夏期学級」の開催・充実に努め、大祭や月次祭で青少年に役割を持たせて意識の向上も図っている。

天理教では毎年夏休み、奈良県天理市の聖地を中心に祭典「こどもおぢばがえり」を開催。約30万人の子どもたちの笑顔でいっぱいになる。朝のおつとめ、プールや演劇、夜にはきらびやかなパレードがあり、子どもたちの鼓笛隊が日頃の練習成果を披露する。聖地で信仰の喜びを感じる貴重な機会として54年から継続されており、道の後継者育成につながっている。

移り行く時代の中で変わらぬ教えが継承されているが、伝える方法は時代に即して模索が続けられている。