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<連載・断面>宗会⑤

2014年4月16日付 中外日報

人の顔が票に見えた 激し過ぎる議員選挙

任期満了に伴う天台宗の宗議会議員選挙が9日に開票され、30人の議員のうち、半数近くが入れ替わった。5選挙区で選挙戦となり、三つどもえの激しい戦いが2選挙区で繰り広げられた。

「手を挙げたら議員になれるのではない。選挙に勝って宗会に出てきた議員だからこそ堂々と物が言える。活発な選挙は宗門の活性化につながる」と、同宗の議員経験者の一人は選挙戦の盛り上がりを歓迎した。

だが、他の教団では行き過ぎた選挙活動が問題になったケースもあり、本紙の宗会意識アンケートでも2割余りが「激し過ぎるので規制する必要がある」と回答している。

◇        ◇

「選挙終盤になると人の顔が票に見えた」――

浄土真宗本願寺派で長年にわたり宗会議員を務めた人の言葉だ。選挙戦の激しさが生々しく伝わってくる。

宗会を舞台に何度も政争が繰り返されてきた本願寺派の僧侶議員選挙では、一般の選挙のように各候補が選挙対策事務所を設け選挙を戦う。

浄土宗では2007年の宗会議員選挙で、ある候補の支援者が有権者に金を配ったとして、監正審議会に申告され処分を受けた。

宗教教団の選挙でも戸別訪問や金品の授受は禁止されているが、「灯明料」「本尊前」という形がとられると、買収行為に当たるかどうかの判断は難しい。

「寺院間の交際の慣習上の礼儀であり、手ぶらで他の寺にお参りするわけにはいかない」(浄土宗僧侶)というのが、議員候補者に限らず多くの僧侶に共通する思いのようだ。

また「有権者の寺院への戸別訪問や直接有権者を訪ねることは規制されているが、人を介して偶然に外で会う選挙運動なら結構行われている」(岡山県の僧侶)との証言もある。

アンケートによれば、選挙での買収行為などを直接、あるいは間接的に見たり聞いたりしたことがあると答えた人たちが4割もいた。

自らが買収行為に関与したという人はさすがにごくわずかだったが、票を買おうとする候補者だけでなく、票を売ろうとする有権者がいるから買収が行われるのだ。

有権者の僧侶らは選挙の際に、何を基準にして投票しているのだろうか。アンケートでは候補者を選ぶ理由について聞いた。

「人物本位」が約5割で最も多かった。約2割が「政策やマニフェスト」を挙げ、同じ教団内での縁組が多いことを反映してか「縁故・血脈関係など」という回答も少なくなかった。

そうした中で、九州の真言宗僧侶は「知らない人や利害関係のない人が候補だったら、結局、(灯明料などを)手厚くしてくれた方に入れてしまう」と、本音を漏らしている。

選挙事務を担当したある教団の関係者も「選挙が始まると、誰が何を幾ら持ってきたかとか、早かった、遅かったなど、すぐに噂が広まる」と話してくれた。

◇        ◇

宗会議員を選挙で選ぶのは当然であり、選挙制度自体が悪いわけではない。しかし、アンケートや取材を通じて浮かび上がってきたような、買収などの不正が行われているとするならば問題だ。

「選挙は本当に恐ろしい。支援者への責任もあり、高揚して自分が僧侶であることを忘れてしまいそうになった」

ある教団の議員は苦しかった選挙戦を振り返ってこう話したが、「僧侶の立場を忘れさせる」まで候補者を追い込むような選挙が果たして教団にふさわしい選挙の在り方なのか。

今、各教団がまずなすべきことの一つは、宗会の根底にある選挙制度の抜本的な見直しではないか。