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<連載・断面>宗会①

2014年4月2日付 中外日報

西欧型の議会制度導入130年余 存在意義が問われる

京都市に本山を構える伝統仏教教団のうち、規模の大きな5教団だけをとってみても、2014年度の「宗会費用」は合計すると約3億5千万円にも及ぶ。単独で約1億5千万円を計上する教団もあり、真言宗御室派の年間予算に匹敵する額だ。原資は言うまでもなく檀(門)信徒らが納める貴重な浄財。宗会(宗議会)は教団の最高議決機関であり、ある程度の経費は必要だ。しかし、「これだけのお金を使って、本当に宗会で有意義な議論が行われ、その金額に見合うだけのものが生み出され、檀信徒や社会に還元されているのか」との見方もある。

真俗二諦仏教には「真諦」「俗諦」の思想があり、出世間的な不変の真理を「真諦」、俗世間的な真実を「俗諦」とする。「真俗二諦論」には宗派、学派の違いにより、さまざまな見解や用い方がある。浄土真宗では蓮如が、「仏法」に対して、俗世間的な法律や慣習を「王法」とする「王法為本説(おうぼういほんせつ)」を説いた。

宗祖の教え、教義に支えられ、信仰を共にする教団に、西欧民主主義社会で発達した議会制度が導入されたのはなぜだろうか。仏教の真俗二諦の考え方に基づけば、宗会は俗諦の象徴的な存在だ。浄土真宗の中興の祖、蓮如は「物を申せば心底もきこえ また人にも直さるるなり ただ物を申せ」と説いた。

宗教教団にこの制度が導入されて130年余りになる。

「宗会は私にとって人生そのものでした」。3月7日、日蓮宗の議員歴5期17年の重鎮、張田珠潮・妙立寺住職(65)=金沢市=が長年親しんだ議場から去った。

昨年11月の任期満了に伴う宗会議員選挙には、宗政会派「明和会」の会長として臨んだ。2009年にライバルの「同心会」に敗北し、下野した野党・明和会の政権奪還を懸けた選挙。勝てば宗務総長の椅子も約束されていたが、負ければ責任を取って会長辞任だけでなく議員を辞職する覚悟だった。

「過半数の議席を獲得すれば宗門運営の主導権を得ることができます。宗門の人材育成を充実させることが、私の一番の夢でした」

全39選挙区中7選挙区が選挙戦となり、できる限り候補者の応援に駆け付けて支持を訴えた。そして迎えた投票日、結果は同心会25議席、明和会20議席。あと3議席というところで夢は破れた。

選挙後、会長職は辞任。議員まで辞めることには選挙区から異論も出たが、その決意は固く、定期宗会の開催を待って辞表を提出した。

一人の僧侶に「人生そのもの」とまで言い切らせる宗会とは何なのだろう。

◇        ◇

中外日報では3月に宗教者に対する「宗会意識アンケート」を実施した。

宗会への興味、関心の有無を問うと、約7割の人が「関心がある」と回答した。その理由は「大切な会議だから」「教団の課題が分かる」などだった。「宗教教団に宗会は必要だと思うか」との問いには約8割近くが「必要」と回答。宗会に関心がなくても「教団の指針やルールはみんなで寄り合って決めるべきだ」という。

一方、「もめごとばかりの宗会」「荒れる宗会」というイメージを持っている人も少なくなかった。

◇        ◇

今年3月には京都市の真宗佛光寺派の宗会で激しいやりとりが繰り広げられた。

「十分な説明ができず、このような結果になって申し訳ない」。佐々木亮一・宗務総長は臨時宗会の閉会に当たり議場から出てくる議員一人一人に声を掛けた。

臨時宗会には本山活性化の一環として、京都造形芸術大の関連会社と提携し、境内の和合所で京都の伝統産業品を販売し、茶所で軽飲食を提供する議案が上程された。

「佛光寺の活性化には素晴らしい話」「若い人が本山に出入りするのはうれしい」。事前には多くの議員が賛意を示していたと、ある議員は明かす。しかし本会議では、それが否決されたのだ。

議案は特別委員会に付託された。「施設利用の条例に違反しないか。弁護士に尋ねるべきだ」と、内局に批判的な冨士谷英正議員が質問を繰り返し、いつになく長い審議の末、議案は否決された。

冨士谷氏は滋賀県近江八幡市の現職市長で、宗門法規にも精通した百戦錬磨のベテラン議員だ。

議案否決の背景には、1年前の総長選挙で、冨士谷氏が推す候補が、対立候補だった佐々木宗務総長に敗れたという事情があった。

それまで大谷義博・前宗務総長と当時、宗会議長だった冨士谷氏が一体になり、宗政、宗会を主導してきた。総長選挙の前に宗会議員の改選があり、こうした宗門運営に不満を持つ新人議員らが、もっと開かれた宗政を求め、佐々木氏を推した。総長選の結果は12票対11票の1票差という激戦だった。

◇        ◇

浄土真宗本願寺派では中堅議員が「教団の運営における議決権を持つ宗会は、教団の中で重要な位置を占めている。宗会はいい意味でも悪い意味でもポテンシャルを持っている」としつつ、自戒を込めて「白熱した議論が展開されるのは当然で大切なことだが、ひとたび何らかの問題が起きると、それがすぐに政争に結び付くといった、まるで国政の永田町のような体質もある」と語る。

そういう体質があるとするならば問題で、アンケートで約1割の人が「宗会は宗教教団に必要ない」と回答した。理由は「争いばかりでちゃんと機能していない」「経費の無駄遣い」「一般寺院との距離を感じる」など。

昨年2月には高野山真言宗でも、資産運用損失問題をめぐり宗務総長への不信任案が可決され、解散に至る激しい争いが繰り広げられた。教団内外の厳しい視線に晒される宗会。多くの宗会は今、その存在意義を問われている。