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木の文化守り発信

㈱千本銘木商会社長 中川敦子氏

2013年10月1日付 中外日報(わが道)

なかがわ・あつこ氏=京都市生まれ。京都教育大卒業。酢屋の10代目当主。㈱千本銘木商会と㈱酢屋の代表取締役社長。幕末、坂本龍馬が逗留し、海援隊京都本部を置いた酢屋を現在まで残し、昭和43年に京都府知事から「京の老舗表彰」を受けた。現在は、海援隊京都本部のあった2階を常に公開しており、連日、観光客が訪れる。
銘木をどう提供するか日夜考えている中川氏
銘木をどう提供するか日夜考えている中川氏

㈱千本銘木商会は屋号を酢屋といい、創業292年を迎える材木商だ。幕末、酢屋(京都市中京区河原町三条下ル)の前は高瀬舟の舟入で、岸には納屋が立ち、舟の荷上げを行っていた。川沿いには各藩の藩邸が立ち並び、近くには土佐藩邸があり、土佐藩士の坂本龍馬が訪れるようになった。龍馬は大政奉還を実現するため、その活動拠点として酢屋の2階に海援隊京都本部を置いた。そのような歴史的背景がある酢屋は現在、10代目当主・中川敦子氏が家業に励んでいる。

(田村誠)

代々受け継いでこられたものは何でしょう。

中川幕末に6代目当主・酢屋嘉兵衛から受け継いできたことは、酢屋が命と家を懸けて龍馬と海援隊を匿ってきた家の歴史。木ひとすじに生きる材木の商売。歴史ある酢屋の家を決して手放さず子孫で守り通してほしいということです。昔と変わらず、今でもその精神は脈々と生き続けています。

時代と共に仕事の内容は変わりましたか。

中川昔は、町家や寺院、茶室などを建てるのに使う材木を材木屋や大工に売る材木商でした。戦後、地域が大変な繁華街となり、やむを得ず商売だけを現在地(京都市中京区千本三条)に移転し、「株式会社千本銘木商会」と名付け会社組織に改編しました。

「銘木」としたのは、従来通り、家の構造になる木を扱うというより、家の内装に使われる銘木を扱うようになったからです。銘木を寸法通りに加工し、仕上げていく銘木加工も共に営んでまいりました。

酢屋の建物を公開されていますね。

中川坂本龍馬の人気でマスコミからの取材が結構あり、27年前から毎年、龍馬の命日の11月15日に酢屋2階の公開を始めました。それから年中訪れる人も増えてきて、9年前からは1年中、2階を龍馬関係のギャラリーとして公開するようになりました。1階は、昔と変わらず木専門の店で、創作木工芸品を扱っています。

材木商としての現在の問題は何でしょうか。

中川当社は今も重要文化財、社寺、茶室、一般住宅に納材させていただいておりますが、現代では座敷、床の間が減り、これから銘木というものを、どのように皆さまに提供していけるかを日夜、考えています。もっとお客さまとじかにお話ししないと、木をもっと分かってもらえないかなというところがありまして。昔のように材木屋さんの注文をお待ちしていても、お客様は遠く、お顔も見えないし。

実際に取り組まれていることは。

中川3年前から10月8日の「木の日」にちなみ、その日に近い土・日曜の2日間、感謝市を開催しています。これは一般のお客さまにじかに会い、木についてお話をさせていただいたり、お客さまのお話を聞かせていただく機会を設けられたらという思いから始めました。今年も10月5、6日に催します。どうぞお越し下さい。

イベントの内容は。

中川銘木見学会として、日本の十大杉といわれている秋田杉や吉野杉、北山杉などのほか、非常に珍しい神代杉も見学していただき、説明させていただいています。銘木を使った木工教室も開いています。また、家具・板のご奉仕即売や木や建築の本も販売し、木のリフォーム相談もしています。

来場者の反応はどうですか。

中川来場されている方は、建築関係の方や一般の愛好家の方などさまざまですが、皆さま、木の美しさや、肌合い、香りを楽しまれ、熱心にご覧になっています。

感謝市をすることによって変わってきたことは何かありますか。

中川来場されるお客さま方に要望をお聞きしたところ、その中で多いのは、「家のこの部分を直したい」「家の内装を直したい」「こんな家具を作りたい」などで、当社にいる木材のアドバイザーが木の選定や適材適所の木を提案し、適切なアドバイスをしています。また、当社の永年の銘木加工職人も木のもの作りについてアドバイスなどを行っています。そのような取り組みから、お店の内装工事や現代の和室の提案・施工や家具の再生や製作などもさせていただくようになり、仕事の範囲が広がってきました。お客さまの夢をかなえるお手伝いができて、お客さまに喜んでいただければ大変うれしいし、それが何よりの私どもの喜びです。

これからどのような方向を目指しておられますか。

中川材木商を続けていくことはもちろんのこと、今まで以上に積極的にお客さま方に木についての提案を行っていき、木の可能性をもっと広げていきたい。長女(中川典子氏)も常務取締役として、また木のアドバイザーとして、一般の方に木に対しての理解を深めていただくため新聞や雑誌にコラムを載せています。これからも全社員一つになって、酢屋・千本銘木商会を酢屋の歴史とともに、古くから伝わってきた日本の木の文化を大切にし、未来に向けて、どのような方にも「木を使ってよかった」と言っていただけるよう努力し、木の文化の発信をさせていただきたいと思っております。