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「伝統」を守る意義を訴える脚本家・作家 内館牧子さん(68)

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2016年10月5日付 中外日報(ほっとインタビュー)

定年とは生前葬なのか

類いまれなる人間観察から多くの脚本や小説を生み出してきた。独自の視点から日本社会や伝統文化を鋭く論じる。

(佐藤慎太郎)

脚本家・作家 内館牧子さん

秋田県生まれ。脚本家・作家。NHK連続テレビ小説や大河ドラマなど、多くの作品を手掛ける。好角家としても知られ、女性唯一の横綱審議委員を務めた(2000~10年)。06年には、東北大大学院で修士号を取得。『女はなぜ土俵にあがれないのか』を刊行する。

昨年出版された小説『終わった人』では「定年って生前葬だな」との衝撃的な書き出しで始まります。

内館ずっと書きたかったテーマだったの。若い頃は「定年になったら趣味に生きるのが楽しみ」と年配の人から聞いていたんだけど、物書きになって実際その年になると本当かなって(笑い)。自分が「終わる」ことに対して、見得もあったんじゃないのかしら。

還暦を過ぎてクラス会が急に増えたけど、そこに至るまでのプロセスは違ってもみんな似たようなところに着地している。むしろ華々しい経歴の人ほど、ソフトランディングできていないのよ。恵まれてきた分その落差が大きい。まだ働きたいけれど学歴や職歴が邪魔になる。女の人も働く人が増えて無関係ではないし、自由業の人でもオファーが少なくなる。「残る桜も散る桜」なんですよね。

思い出と戦っても勝てないということですね。

内館主人公の最後の出社の日には、花束贈呈のセレモニーがあって、黒塗りのハイヤーで送り出される。失礼な追い出し方ではないけれど、まるで「出棺」よね。でも実際にそうしている会社があるのよ。

やはり、60歳前後というのは一つの節目で、まだ頭も体もぴんぴんしているのに、若い人に譲らないといけなくなる。社会的に一度死んでしまうのよ。そのことをクールに認めて、「社会的な死」の後のことを考えないといけないんじゃないかしら。

「生前葬」が終わっても仕事がしたくていろいろとあがく主人公は、ラストシーンで故郷の盛岡に帰り、「ここでなら生き直せる」って振り返る。男性読者から「希望を持てた」なんて感想を多くもらって驚いたけど、やはりふるさと志向が強いことの表れなんでしょうね。