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女性で世界初のエベレスト登頂を成し遂げた登山家

田部井淳子さん(76)(1/2ページ)
2016年8月24日付 中外日報(ほっとインタビュー)

アジア人は遺体大切に

世界の山々を巡り、最高峰・最高地点を目指し続ける登山家。山で友人を失い、自らも命の危機にさらされたことも。「死の計画は立てられない」と昨年、自分の葬式だと思って「感謝の会」を開いた。

(甲田貴之)

登山家 田部井淳子さん

登山家。女性として世界で初めてエベレスト登頂、さらに七大陸最高峰登頂を果たした。70カ国以上の最高峰を制覇。女性のための登山サークルや東日本大震災の被災地の高校生による富士登山イベントなどを立ち上げて、山の素晴らしさを伝えている。

登山には常に危険が伴います。

田部井もちろん、死ぬために行っているわけではないですが、そういう場面に出くわすことが多いです。落ちる時は一瞬。落ちていく人が自分の身体をかすめる感触は説明できない。私の袖をこすりながら落下して、地面に衝突した時には、もう生きた人ではなくなっている。

私のザイル・パートナーだった女性は、群馬・新潟県境の谷川岳一ノ倉沢で亡くなりました。当時、私は別の用事で行けず、彼女は滑落した仲間を止めようとして一緒に落下したそうです。後日、仲間による必死の捜索の結果、岩と岩の間に挟まっている遺体が見つかりました。登山服には血がたくさん付いていました。

私たちは、彼女のお母さんには奇麗な姿で会わせたいと、すぐに近くの呉服屋で着物や帯を買って、自分たちで着替えと化粧をしました。駆け付けたお母さんが「冷たかっただろうね」と何度も何度も顔をなでていた姿は忘れられない。切ない気持ちになると同時に奇麗にしておいて良かったと思いました。

エベレストなどの山では遭難した方のご遺体に遭遇することがありますが、日本人をはじめアジアの人は遺体を大切にする傾向があるように思います。私もパキスタンのガッシャーブルムⅡ峰で凍り付いたご遺体と出会った時には、自然と手を合わせていました。一方で、西洋人は死んでしまうと、物として捉え、山から下ろして家族に会わせたいという意識が希薄なようです。遺体を回収する活動をしている人の多くはアジア人です。