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フランスに念仏の風を

浄土宗ヨーロッパ仏教センター主事 高僧光隆さん(66)

2017年6月7日付 中外日報(ひと)

高僧光隆さん

「高僧さん、今、風が流れ出したよ。これからそれを流し続けるのは、あなたですよ」。2007年の浄土宗ヨーロッパ仏教センター開設披露式で参加者から掛けられた言葉を胸に、手探りながらもフランスでの開教の歩みを進めてきた。

石川県七尾市の浄土宗西光寺の生まれ。37歳の時に寺を飛び出し、画家を志して渡仏した。絵筆だけでは暮らしていけず、観光客やビジネスマン向けリムジンの運転手をしていた時期もある。

在仏日本人の存在や、親鸞や道元の名前を知るフランス人もいたことから、仏教とは無縁の地ではないと強く感じるようになった。当時の成田有恒宗務総長の後押しもあり、浄土宗の教えを弘めるため開教を決意した。

仏教センターは月に1回、パリ市内のホテルで勉強会・念仏会を開く。参加したフランス人に「念仏を称えたら、悪い事をした人でも天国(極楽)に行けるのか」と厳しく問われ、思わず答えに詰まってしまったこともある。「だからこそ、法然上人の教えについてより深く考えるきっかけになった」

最近、就寝前に繰り返して念仏を称えていると、日本やフランスという国の違いを超えた阿弥陀仏の計り知れない働きをしみじみと感じる。

今月10日にはセンター開設10周年記念の講話会をパリ市内で開く。その準備に忙しい中、5月22~30日に東京都内のギャラリーで久しぶりに個展を開いた。信心の深まりを表現したような、モノトーンながらも生命感あふれる作品に、訪れた人が「作風が変わりましたね」。この言葉で自らの信仰にようやく確信が持てた。

(佐藤慎太郎)