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欧州の人に安らぎを

ドイツ禅センター・曹洞宗普門寺堂頭(住職) 中川正壽さん(69)

2016年11月18日付 中外日報(ひと)

中川正壽さん

単身ドイツに飛び込み37年。20年前に創設した禅センター・曹洞宗普門寺には今やヨーロッパ全土から心の安らぎを求める人たちが集まる。

ドイツに渡ったのは「禅が全ての人に通じる普遍的なものかどうかを確かめたかったから」と振り返る。今では「そんなことを思うのは、しっかりと坐禅をしていなかったからだ」と屈託のない笑みを浮かべる。

京都の在家に生まれ、高校時代、人生や進路に悩んで臨済宗の盛永宗興・大珠院住職(後に花園大学長)の下に通い、阿含経の講義を受けた。慶応大に進学し、内山興正氏や酒井得元氏の下で参禅、やがて出家した。

大本山永平寺で修行している際、ドイツから来た参禅者の「本国に来てくれる指導僧を探している」との話に触発され、旅立った。

当初、田舎に民家を借りて道場としたが、壁の隙間から星が見えるほどのぼろ家。氷点下35度の寒波で、毛布をかぶって参禅者と共に坐禅したのは良い思い出だ。

フランスを拠点に活動するティク・ナット・ハン氏との出会いも大きかった。日本の禅は健康な人が対象になりがちで、全ての人を救いたいという理想との間にギャップを感じていた。ハン氏の教えは「呼吸に注目した瞑想で、子どもも大人も障害者も実践できる」。今は同寺のプログラムの一つになっている。

効率第一の世の中で、人間が道具化されていると危惧する。ドイツの国民病も近年、腰痛からうつ病に変わった。「人々は安らぎを求めている。自然に恵まれた普門寺で、根本的な安らぎの道を歩んでほしい」

(赤坂史人)