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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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研究体験宗政に生かす

真言宗豊山派宗務総長 星野英紀さん(72)

2016年10月7日付 中外日報(ひと)

星野英紀さん

大正大学長を経て宗務総長に就任した。「3カ月たって、徐々に学者としての経験や自分の思いをどうやって宗務行政に生かしていくか、考えられるようになった」

重視しているのは「現場」だ。自ら巡礼しながら、四国遍路における巡礼体験について研究し、東日本大震災後には被災地で僧侶や檀家を対象にした聞き取りを通じて、寺院の役割について調査してきた。今度は宗派という現場で、教団のあるべき姿や宗侶の自覚と意欲の向上を模索していくつもりだ。

被災地の調査で未曽有の災害の中でも、墓を守り先祖供養を続ける人々の姿に日本仏教の特徴を見た。「伝統を守ることが、寺院をこれからも生かし、残っていく鍵になる」と確信した。宗務行政を進める上で、被災地で得た経験は大きい。

被災寺院の復興に尽力する僧侶の周辺に徐々に人が集まっていく様子を目の当たりにし、「僧侶の『やる気』こそが重要だ」と実感した。「それぞれの現場で自分に何ができるかを考えていく、その心構えが大切」。これは自戒でもある。地域に根差して保護司や町会の役員などを続けてきた人も多い。「そういう人たちを宗派がもっと後押ししていく必要がある」

宗教学者として、規模も教えも異なる日本の諸宗派を単純に“仏教教団”と、ひとくくりに見てきた反省がある。

「宗派も個々の寺院も歴史、地域性など個性は異なる。その個別性を認めた上で、宗務行政としてどう宗門全体の連携を深めるか」。これこそが過疎化、少子高齢化など急速に変化する社会で宗門の未来を開く第一歩だと言う。

(甲田貴之)