ニュース画像
多くの人が見守る中、彰義隊墓所で盛大に営まれた150回忌法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 東日本大震災と宗教者 「教団アンケート」から

東日本大震災と宗教者 「教団アンケート」から

発信通じ社会とつながり――有効だが情報格差も

平成23年(2011年)9月29日掲載

東日本大震災では、多くの教団がホームページ(ウェブサイト)にさまざまな情報を掲載するなどインターネットで発信を続けたことが、中外日報社による「教団アンケート」で分かった。また固定電話などの連絡手段が途絶える中、メーリングリストやツイッターといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を双方向の通信に駆使したところも。一方で、メディアリテラシー(情報の評価識別能力)などの課題も見えた。日常の教団の社会への情報発信のあり方にも直結する重要な問題だ。

調査対象の18教団では、ホームページは日常の宗教活動の中ですでに活用されているところがほとんど。被災者らに向け管長の「見舞いの言葉」を動画で配信した臨済宗妙心寺派をはじめ、浄土真宗本願寺派、神社本庁、創価学会など多くが激励や見舞いのメッセージを掲載した。

またどの教団でも安否・被災情報や救援情報、義援金募金やボランティア募集の呼び掛けなどにはかなりの効果を発揮した。真言宗智山派は「非常に有効」、金光教は「不確定情報が飛び交う中で正しい情報を提供できた」と評価している。

運用は多様で、妙心寺派は毎日数回更新し、真宗大谷派は本山だけでなく現地支援センターのホームページも立ち上げた。内容も、真如苑は慰霊法要の様子を一般向け動画サイト「ユーチューブ」に初めて公開、カトリック教会ではサイトの呼び掛けに世界から反応があったという。

創価学会は被災会員の生の声を伝え、曹洞宗は原発事故による風評被害や差別を防ぐポスターをダウンロードできるようにした。

ホームページは情報が一方通行になりがちな面も。そこで立正佼成会は国内外の会員に応援メッセージを募って発表。一斉にメールでやりとりするメーリングリストは、浄土宗など何教団もが本部と被災地、支援者との情報交流に利用した。

パソコンでも携帯電話でも閲覧でき、マスメディアより速報性がある簡易ブログのツイッターは、天台宗や真如苑などが使っており、妙心寺派も途中から導入した。

金光教は、情報収集・管理チームを編成して刻々変化する状況を整理し、集中管理のサーバーにネットワーク接続して情報を交信する「クラウドコンピューティング」やネット掲示板も動員して対処した。「これらの恩恵は計り知れないほど大きい」としている。

ただ、これらのメディアは、使用する人がまだ全体に広範化しておらず、経済面や高齢者には困難という面も指摘されており、智山派は「格差」を懸念。また教団でも、若い職員や青年会に運用を委ねるケースが目立ち、日本基督教団は「これを機に有効活用を検討中」と回答した。

教訓も多い。ホームページの掲示板を活用した高野山真言宗は「書き込みが励みになる一方で、誤解から来る問題のある表現も見られる」と、オープンな場ならではの課題を挙げる。天台宗は、情報のスピードは速いが正しいものかどうか取捨選択が必要、とリテラシーの重要性を強調した。

システムとしても、「安否被災情報サイト」を以前から設置していたが、教団内の認識が低く加入者がごく一部だったため満足に機能しなかった例があった。

また浄土宗は、例えばボランティアのコーディネート、支援物資の供出と需要のマッチングなどのためのコミュニティーサイトを日常から準備しておくのが理想としつつ、運用管理の人員確保などを課題に挙げ、「超宗派でこれに対応することも視野に入れる必要がある」としている。

臨済宗妙心寺派の松井宗益・宗務総長は「さまざまな形でボランティアに参加した僧侶も多い。禅門では陰徳が重んじられるが、なるべく多く情報を集めホームページで公開した。檀信徒や市民にこうした活動を知ってもらうのは必要で、われわれ自身互いに励まし合うことになる」と語る。

同派は「(情報収集にも)今後はフェイスブックなどのSNS利用は必須」と回答している。

このような「発信」と「受信」のあり方、意義は、普段からの教団の動き、宗教活動にも密接に結び付く。教えや考えをアピールすることに加え、外部からのアクセスに適切に対応すべき場面もあろう。

超教派の宗教者や研究者のネットワーク「宗教者災害支援連絡会」の岡田真美子・兵庫県立大学教授(環境宗教学)の話

「誰に向けた情報発信かが大事。現時点はまだ被災者よりも周辺の支援者向け情報が必要で内容の吟味も求められる。とはいえ各教団が『精神復興』ということを実際の取り組みをもって示し、発信されたものがネットによって広がったのは極めて有効。一般の、特に若者の宗教アレルギーに風穴を開け、『2ちゃんねる』で教団の貢献が論じられている。現に世論の信頼にもつながったのは大きな意義がある」

震災以降の状況を試金石として、宗教教団と社会との関係が信仰や情報発信にも絡めて再考される中で、今回のアンケートの内容は多くの示唆を含んでいる。