ニュース画像
開基の妙達上人像を開眼する五十嵐住職
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

墓地経営の意味 公共的な責務の視点

2016年12月9日付 中外日報(社説)

過疎、高齢化、小家族化で、寺院のお墓事情は変わってきた。無縁墓が増え、「墓じまい」という新語が広まり始めた。社会の変化を踏まえ、永代供養墓、納骨堂などを設ける寺院も多い。

墓は檀家とのつながりを象徴する、寺院からは切り離せない存在だ。厚生労働省の2014年の統計では、宗教法人の墓地は全国で5万7899カ所を数え、地方公共団体墓地の約2倍に達する。

ところで、先頃愛媛大で開かれた宗教法学会のシンポジウムは、墓地を「公役務」の観点から検討した。「公役務」とはフランスの行政法などで用いる公共・公益に関わる行政役務の概念だが、日本でも墓地は近代以降、行政が担う課題として扱われている。

これについて、厚労省は「墓地経営主体は、市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られる」(「墓地経営・管理の指針等について」、2000年)と墓地行政の「原則」を示す。墓地運営は公共性・社会性の観点でなされる「公役務」であり、諸般の事情で宗教法人等が行うのは行政からの「委任」ということになるだろうか。

上記シンポで報告した竹内康博・愛媛大教授は「これによりがたい事情」は拡大解釈されてきたと指摘している。ただ、地方公共団体経営の墓地を新たに造るより、既存の宗教法人墓地その他に「役務」を委ねる方がはるかに合理的であることも多い。それが2倍という数字に表れている。

一方で、行政にとって墓地提供が「公役務」であり、市町村長の許可を受けて行っている以上、宗教法人の墓地経営もその延長にある、ということの意味の認識はあまり浸透しているとは思えない。「公役務」委任の視点で見ると、墓地経営で専ら収益性を追求するのはふさわしいとはいえないだろう。ましてや、営利目的の「名義貸し」などは避けなければならないのは言うまでもない。

寺院は厳しい墓地事情に直面している。寺門護持の一助に墓地開発や大規模な納骨堂建設を計画する所も少なくないが、それが裏目に出て苦境に陥る例も存在する。他方、都市部で納骨堂や永代供養墓などを希望する人が多いなら、環境や利害関係を配慮しつつ需要に応えるのも公共的な責務だと理解できるのではないか。

社会の超高齢化、「家族」の弱体化など墓地をめぐる公共的問題は、今後さらに複雑になる。墓地を経営する宗教法人も、行政の「公役務」の委任という性格を強く意識しておくべきだろう。