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宗教法人の「売買」 包括団体の立場も問われる

2016年8月3日付 中外日報(社説)

宗教法人が「売買」されるという話ほど、宗教を愚弄し、宗教法人制度の信頼をおとしめるものはない。ところが、インターネットでは宗教法人の売買の情報が公然と流されている。耳障りよく「禅譲」などと称するサイトもある。

「法人格」自体は金で取引されるものではないから、退職金等の名目の金銭提供やその他の利益供与を伴う代表役員の交代ということになるだろうか。所定の手続きを踏んだ代表役員交代なら、実質は売買でもそれを取り締まる法規はない。

ただ、被包括関係があれば、包括法人によるコントロールが利く。ある伝統仏教教団の被包括法人で、高齢の住職が僧籍のない人物に法人の実質的権限を委譲していた事例では、宗派が懲戒処分を下し、訴訟も厭わず宗教法人の悪用を未然に防いだ。例えば仏教なら「法類」といった宗派規程で定められた被包括法人同士のヨコの関係などがあって、そこでも信教の自由と何の関係もない不適切な行為に対しチェック機能が働く。

売買する側にとって、宗派規定は商売の妨げになるので、あらかじめ被包括関係廃止の手続きをするのが一般的だ。宗教法人売買サイトでは、包括関係が存在しても「手付金を払えば単立にする」など堂々と宣言しており、裏をかくテクニックがあるのかもしれない。だが、それをあっさり見逃すようでは包括団体である宗門の自律性、公共性が問われるだろう。

不活動(休眠)法人に関しては、宗教活動がなければ法人としての目的も消える。包括団体の下で寺籍を残す選択はあっても、法人格は合併・解散すべきだ。しかし、マスメディアで常識化した「不活動・休眠法人」が宗教法人悪用の元凶、という分かりやすい説にくみするわけではない。

地方の所轄庁レベルでは不活動状態の法人はチェックされており、関西のある所轄庁では、長いブランクを経て代表役員変更届が突然提出された場合、活動再開届を求め、団体の同一性確認など現地調査も行うという。「むしろ心配なのは不活動ではない法人」とは法人売買に関する宗教法人担当者の見方だ。

当然の話だが、売ろうとする人間のモラルがまず問題になる。宗教団体は人の集まりであり、極端な性善説を取らない限り、自らの立場を悪用する者も一部には存在すると考えなければならない。それを抑えるのは同信同行の組織である教団の力だ。宗教法人の売買では、不活動法人放置の責任論とは別に、包括団体の自律と自浄能力も問われている。