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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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テロと排外主義 暴力を抑える宗教の知恵

2016年7月6日付 中外日報(社説)

トルコ・イスタンブールのアタチュルク国際空港で6月28日にテロがあり、40人以上が死亡、200人以上が負傷した。7月1日にはバングラデシュ・ダッカのレストランで人質テロ事件が起き、20人以上が死亡、その中に日本人7人が含まれていた。3日のイラク・バグダッドのテロでは、210人以上が死亡したと伝えられる。

いずれもイスラム過激派が絡んでいるようだが、これほどテロが続く世界は、戦争状態ではないにせよ、平和とは程遠いと言わなくてはならない。平和を目指して人々の福利のために現地に赴いていた日本人の方々の死は誠に悲しい。人間の安全保障のための国際協力が課題だが、日本も「テロとの戦争」の当事国になってしまったのかもしれない。

テロ多発で、移民や難民の受け入れを渋り、外国人を排斥しようとする動きが強まることが懸念される。欧米では国境の壁を強化し、内の結束を高めようとする傾向が強まっている。6月23日に行われた国民投票で英国はEU離脱を選択したが、米大統領選挙でも共和党のトランプ候補が移民を認めず、国民の利益の優先を強化する立場を強く打ち出している。

米英両国では1980年代にレーガンとサッチャーが政権を握り、資本主義市場経済を拡充する一方、国家の肥大化に歯止めをかけ「小さな政府」を目指す政治を推し進めた。資本主義陣営の経済攻勢でソ連を中心とする社会主義国家勢力が解体し、米英が代表する新自由主義が勝利を謳歌した。ところが、今やこの両国で国家間の壁を高めようとする世論が強まっている。これは注目すべきだ。もはや欧米諸国に世界の警察官の役割を期待することはできない。国際政治秩序が弱まり、国境を超えた暴力の噴出を抑えるのがますます難しくなっている。

国家同士の対立が絡む場合もそうでない場合も、宗教や民族の溝が暴力の背景にある。日本と隣接諸国がいがみ合いを強めているのも同様だ。宗教と民族による対立とは、人間同士が集団的に結束して敵対関係に陥ることである。80年代以来の30年間、資本主義の成功を信じ、豊かさを求めて国境を超えた経済拡大路線を強めてきた結果、人類社会はますます暴力を制御できなくなっている。

テロリズムや排外主義の広まりにどう向き合うか。拡張する経済を人間らしい生活と社会性に服させる知恵が求められる。元来、諸宗教は暴力を抑える道を教えるものではなかったか。今こそ宗教が持つ知恵を、非暴力へのベクトルの強化に向けていくべき時だ。