ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

「訪問」か「参拝」か 法の支配が問われている

2016年6月1日付 中外日報(社説)

主要国首脳会議(G7伊勢志摩サミット)が5月26、27日に開催され、1日目に首脳は伊勢神宮を「訪問」した。日本経済新聞電子版(26日付)は、公式行事で首脳を神域に導くことは日本国憲法の政教分離の原則に違反しかねない事柄だったと報じている。

同紙によれば、外務省は昨年末から内閣法制局長官と水面下で協議し、どうすれば憲法違反にならないかを詰めてきたという。まず、行事の呼び方を「参拝」ではなく「訪問」に統一した。そのことにつき、政府関係者は報道関係者に再三注意を促した。また、二礼二拍手一礼を求めたり、修祓を行うことは避けた。だが、手水は一般的な文化伝統で宗教行為ではないので問題ないとしたという。

一方、産経新聞(5月24日付)は、これは正式参拝の「御垣内参拝」だと報じている。「安倍晋三首相の案内のもとに内宮の「御正殿」で御垣内参拝を行う。「二拝二拍手一拝」の作法は求めず、あくまで自由に拝礼してもらう形をとる」と。同紙の捉え方では、G7首脳は伊勢神宮を「訪問」というより「参拝」したのだ。各国首脳が日本の国家的な宗教施設に参拝したと捉えていることになる。

産経はあえて政府見解に反対して「参拝」と捉えたのだが、それは各国首脳を「御垣内」まで導いたことを「参拝」と受け取ることができると見なしているからだろう。「拝礼」があったかどうかはよく分からない。これが憲法の政教分離原則に違反するかどうかは微妙なところだ。

政府はこのような「訪問」形式なら違憲裁判で勝てると判断したのだろう。一方、伊勢神宮を特別な国家的地位をもつ宗教施設と考えたい人々は、産経のように、G7首脳は「参拝」したのだと受け取ることになる。政府はそのような紛らわしい形で、伊勢神宮「訪問」を公式行事に組み込んだのだ。

これは安倍政権が繰り返し行ってきた立憲主義への挑戦の新たな試みと捉えることができる。集団的自衛権の容認は憲法違反の疑いがあると多くの憲法学者が判断したが、閣議決定で押し通し法制化した。この度は、憲法の政教分離原則をなし崩し的に突破し、伊勢神宮に国家的な地位を与えるための布石を打とうとしているようにも見える。少なくとも産経の読者はそう受け取ることになる。

国政に関わる極めて重要な問題が、十分な議論なしに違憲すれすれの巧妙なやり方で押し通される。これでは、法の支配を尊ぶ国民は安心して日々を送ることができない。信教の自由を尊ぶ宗教者もその思いを強めざるを得ない。