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ゲノム編集 進む生命の作り替え

2016年3月30日付 中外日報(社説)

新たな遺伝子操作技術「ゲノム(遺伝情報)編集」の応用が世界で急速に進んでいる。医療や農水産業など諸分野での活用が期待される一方、親が望んだ外見や能力を持つ「デザイナーベビー」の誕生につながるなど、人への適用に懸念の声が上がっている。

生物の遺伝子を操作・改変する技術はすでに「遺伝子組み換え」が普及し、害虫や農薬に強い農作物などが作られてきた。

ゲノム編集は遺伝子を切断する酵素を使い、遺伝子を「切り貼り」するなどして自在に作り替える技術。従来の技術に比べ非常に高い精度で、効率よく安価に遺伝子を操作できることから近年、急速に普及した。腐らないトマト、肉付きのよい魚や牛の生産など野菜・家畜の品種改良、エイズや白血病など難病治療の応用研究が各国で進んでいる。

一方で安全性や倫理的課題についての検証・議論はこれからだ。昨年4月、中国の研究チームが正常に育たないとされる人の受精卵をゲノム編集で改変したと発表、国際的な批判を浴びた。

12月には米国で国際会議が開かれ、人の受精卵への「臨床応用は無責任」としつつも、基礎研究は容認する声明を公表。今年2月には英国政府が世界で初めて基礎研究を公式に認めた。不妊の原因を探り、操作した受精卵を子宮に戻さない、受精後7日間で廃棄するなどの条件があり、同様のルール作りが他国でも進むとみられる。

日本では、人の受精卵の遺伝子を改変する臨床研究は厚生労働省のガイドラインで禁止されているが、法規制はない。基礎研究についても明確な指針はなく、現在、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の生命倫理専門調査会が課題の整理、検討を進めている。

改変した受精卵から子どもが生まれた場合、改変の結果は子どもの全ての体細胞に及ぶ。さらに子孫へと伝わることになり、次世代への影響は極めて大きい。

山中伸弥・京都大教授はゲノム編集について、テレビ番組で「iPS細胞なんて足元にも及ばないような、ものすごく可能性のある技術」だと評価。ただし悪い面を伸ばすと「人類は後悔する」として、「科学者に加えて、いろんな生命倫理者、市民の方も含めた議論が必要」だと訴えた。

ゲノム編集は人間が生命の設計図を書き換え、生き物を思うように作り替えることを可能にすることから、「人が神の領域に踏み込んだ」「神を演じるというのに近い」という声も上がる。新たな技術とどう向き合うのか。宗教界の議論が求められる。