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山口は議会制の先進地 首相は歴史に学べ

2016年3月4日付 中外日報(社説)

1票の格差が2倍を超える衆院選は違憲状態との判断が、最高裁で示された。都道府県ごとの定数配分をどう改めたらよいか。衆院議長の諮問機関から「アダムズ方式」の導入が答申された。2010(平成22)年の国勢調査に基づいて東京など5都県の定数を7増やし、青森など13県で各1減らす「7増13減」案である。

論議のさなかに、昨年10月1日に行われた国勢調査の速報値が報告された。それによると首都圏への人口集中がさらに進み、報道機関等の試算では5都県で9増やし、15県で15減らす「9増15減」が必要だという。

新しい資料が与えられたら、これ幸いとその資料を基に論議するのが当然だ。だがそれでは自民党に不利になるとみて、安倍首相や自民党幹部は「7増13減」の導入すら渋り、「0増6減」の小幅な手直しで切り抜けたいと主張する。抜本的な改定は20(平成32)年の国勢調査を待つとか。

一連の「一票の格差」訴訟判決では、格差2倍超は違憲または違憲状態とするのが常識のようだ。抜本的改正を20年以降に先送りするなら、少なくともあと1回は「違憲状態」の総選挙を強行することになる。三権分立の原則を無視することにならないか。

勘ぐった考え方をすると「9増15減」を導入すれば、安倍首相の選挙区の山口県も定数減の対象になる。四つの選挙区を一つ減らすと、地盤の変動は小さくない。自民党王国の山口だけに、同じ党の議員同士で摩擦が起こる。まさか一国の総理がそんなことを考えないとは思うが……。

明治維新の直後、全国の府県にはそれぞれ議会が開設された。しかし国全体の議会の構成は遅れていた。各藩が勤王・佐幕に分かれて戦ってから、まだ日が浅い。方言の違いもある。国会を開設しても、円滑な運営ができるかどうかが危ぶまれていた。

そこで、浄土真宗本願寺派(西本願寺)の山口県の僧侶が提唱した。宗派を議会制度で運営してみようと。1881(明治14)年、全国を18選挙区に分け、500カ寺から1人の割合で選出された41人の会衆(議員)が、仏教界初の集会(宗議会)を開いた。

その運営ぶりに注目した山口県(長州)出身の政治家は、本願寺派の成功に学び、9年後の90(明治23)年に衆議院・貴族院二院制の帝国議会を召集した。

その意味で山口県は、議会政治に関して、いわば先進県だ。安倍首相はこうした歴史を学び、定数問題に誰もが納得できる決断をすべきだろう。