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ミャンマー新政権 宗教間融和へ重い課題

2016年1月22日付 中外日報(社説)

昨年11月のミャンマー総選挙でアウンサンスーチー氏が率いる野党・国民民主連盟が圧勝し、3月に政権交代が実現する。ミャンマーでは民主化が進む一方で、国民の大半を占める仏教徒とイスラム教徒との対立、特にイスラム系少数民族「ロヒンギャ」に対する仏教徒側の抑圧が続いており、新政権が諸民族・宗教間の融和をどのように進めていくのか注目される。

ロヒンギャは西部ラカイン州に約80万人が暮らす。政府はロヒンギャを隣国バングラデシュからの不法移民だとして自国民と認めず、移動の自由などを厳しく制限し、11月の総選挙でも投票権を与えなかった。軍事政権時代からの迫害で国外に逃れる人が後を絶たず、昨年は難民を乗せた多数の船が海上を漂流し、人道上の危機として国際社会で問題になった。

ミャンマー国内ではロヒンギャに同情的な声はほとんどないのが現状だ。スーチー氏はかつてロヒンギャの市民権付与に言及したが反発を買い、近年は沈黙を守っている。少数民族武装勢力との和平交渉を新政権の最重要課題としており、ロヒンギャ問題をめぐる新政権の立ち位置は今も見えない。

反イスラム強硬派の仏教徒組織「民族・宗教保護協会」(通称マバタ)が活動を先鋭化させている影響も大きい。協会は2013年に設立され、ロヒンギャ、イスラム教徒の人口急増を脅威としてロヒンギャ排除の世論を主導してきた。全国に200以上の支部を持ち、約50万人の仏教僧の半数以上が協会の支持者とされる。

ミャンマーでは昨年、出産間隔を3年以上とする人口抑制法や仏教徒女性と異教徒との結婚制限、一夫多妻の禁止を定めた法律など4法からなる「民族・宗教保護法」が成立した。海外からは「ロヒンギャを標的にしている」と批判の声が上がったが、法案の原案を起草し、全国で100万人以上の署名を集め、政権に法案成立の圧力をかけたのがマバタだった。

ロヒンギャ問題は民族・宗教・政治的な背景が複雑に絡み合い、解決への道のりは険しい。難民の受け入れを含めた国際社会の支援が不可欠だ。諸宗教間の対話や国連との連携などで問題に取り組んできたWCRP(世界宗教者平和会議)ミャンマー委員会が4月に日本を訪問する。受け入れる日本委員会はミャンマーの民主化や諸宗教協力をテーマに東京でシンポジウムを予定している。特別ゲストとしてマバタのメンバーも来日の見込みだといい、実現すれば対話の第一歩として意味は大きい。日本の宗教者との真摯な議論と訪日の成功を期待したい。