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「敵」に怯える世界 許しと和解への希望

2016年1月1日付 中外日報(社説)

2016年の始まりは暗い。そう感じている人は多いかもしれない。その理由はまず、世界の人心が平和を求める気持ちを弱めているように感じられるからだ。

「敵」に怯え「敵」に対し身構えることに忙しく、友愛を求めて友好的な関係を作り上げていく方向に心が向かない。そのため、攻撃的な姿勢を好む政治家が指導者に選ばれやすい状況が広まっている。

イスラム教徒を排斥しようとするアメリカやヨーロッパ諸国の動きが念頭に浮かぶ。とりあえずは難民を受け入れることができるかどうかという現実的論題に関わる。背後にキリスト教文明を守ろうとする意識があることが懸念される。そのような欧米諸国の姿勢はイスラム教徒に対する偏見と排除の考え方の表れと受け取られかねない。それは、キリスト教世界とイスラム世界が全体として争い合っているというイメージを広めていくことになるだろう。

だが、そのような対立構造が育つことを歓迎する人々もいる。内側の結束を強め、他者を排除することに希望を持つ集団もあり、対立が深まることで政治的、経済的利益を得る勢力もある。約1千万のスンニ派イスラム教徒がその支配下で生活しているとされる「イスラム国」は対立構造が深まることを望んでいるはずだ。世界の若いイスラム教徒をリクルートするチャンスが増え、穏健なイスラム教徒の共感も誘う。

同様に、一部の攻撃的なキリスト教徒やユダヤ教徒にとっても、対立構造の拡大は好ましい兆候となる。難民や移民を好まず、他の人種、民族をきらう人たちも対立構造の拡大による不安を煽り、「異質な者の排除」の言説を強める。東アジアでも「外国人ぎらい」など同様の事態が生じている。

伝統を尊び、国民の連帯意識に配慮するのはもちろん必要だ。経済のグローバル化が進むと連帯感をもって助け合う関係が弱まっていくので、宗教や人種・民族・国家を前面に押し出して連帯感を強めようとする傾向が生じる。問題は、その際、内部の結束を尊ぶあまり、他者や異質な者への排除や攻撃の姿勢が強まってしまうことである。これを抑え、和らげるにはどうすればよいか。

排除と抑圧を避ける姿勢を根底に持つ立憲政治による法の支配を尊ぶこと、様々な場所で対話や平和のための実践を広げていくことが希望となる。憎しみが目立ち暗く見える現代世界ではあるが、その中にも対話や友愛の希望の光が増えてきてはいないか。そしてそこに、宗教的な赦しや和解の精神が見て取れないだろうか。