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疑わしい20条改正案 政教分離の意義再認識を

2015年12月18日付 中外日報(社説)

自由民主党などが目指す憲法改正が現実味を加えてきた。同党の「日本国憲法改正草案」は、野党時代の2012年4月に発表されたもので、05年11月の「新憲法草案」では広い層の支持を考えて抑えていた主張が、支持基盤の保守層に選挙でアピールするため、あらわになっているとの評価があった。しかし、現政権の支持率が安定している状況下、「これはまさか」と思われるような改正案も実現性がないとは言い切れない。

草案全体の検討は別の機会に譲り、ここでは信教の自由、政教分離に関する第20条の改正案を読んでみよう。現行憲法は「①信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない②何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない③国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定している。第1項の「政治上の権力」や第3項の国及びその機関に禁止される宗教的活動は立場によって解釈が異なるが、条文はシンプルだ。

05年の「新憲法草案」は第1、第2項に手を触れず、第3項のみ「国及び公共団体は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものを行ってはならない」と「いかなる」を外し規定した。後半は津地鎮祭訴訟最高裁判決で示された「目的効果基準」である。

12年草案はさらに「国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない」と変えた。

政教分離原則の緩和の明記だ。13年10月増補版『日本国憲法改正草案Q&A』で、自民党は「これにより、地鎮祭に当たって公費から玉串料を支出するなどの問題が現実に解決されます」と狙いをはっきり示す。「この限りでない」の圏内には首相らの靖国公式参拝なども当然含まれ、その違憲性を問われることもなくなる。

12年草案は20条1項の「何人に対しても」を削除し、宗教団体の「政治上の権力」行使禁止もあえて削った。どのような意図があるのか疑われるところだ。憲法の保障する自由と権利は国民の不断の努力によって保持しなければならない、とする憲法第12条の意味を、私たちは改めて深く考えるよう迫られている。