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米で「死ぬ権利」法 問われる終末期医療

2015年11月13日付 中外日報(社説)

米国カリフォルニア州で10月、末期患者に対する医師の自殺幇助(PAS)を容認する法案、通称「死ぬ権利」法案が成立した。回復の見込みのない患者が自分の意思で死を選択できることになり、薬の処方などで死を手助けした医師は罪に問われない。

同様の法律は米国ではすでにオレゴン州、ワシントン州などにあるが、カリフォルニア州で法案が議論されたのは、米国人女性ブリタニー・メイナードさん=当時(29)=の死がきっかけだった。

脳腫瘍を患い、余命半年と宣告された彼女は「思い通りに穏やかに死にたい」とインターネットなどで訴えた。カリフォルニア州から「死ぬ権利」が認められたオレゴン州に移住し、宣言通り昨年11月1日、医師の処方した薬を服用して死去。賛否をめぐり全米で大きな論議を呼んだ。

法案は今年1月、カリフォルニア州議会に提出された。カトリック教会や障害者団体などが反対する中、9月に州議会で可決。カトリック教徒のブラウン州知事の判断が注目されたが、10月5日、法案に署名した。

彼女の死や法案の成立は「安楽死」「尊厳死」の選択、合法化として日本でも報道された。ただし日米ではこれらの用語が違う意味で使われており、注意を要する。

米国でPASは「尊厳死法」の中で定められるが、日本での尊厳死は一般に延命治療を行わずに死を迎えることを指す。PASは患者自らが医師の処方する薬を服用する点で、医師が致死薬を投与する安楽死とは区別される。

日本では患者を死なせる目的で医師が薬剤を投与、処方すると殺人や自殺幇助罪に問われる恐れがある。1991年の東海大付属病院事件、98年の川崎協同病院事件等で医師が有罪判決を受けた。

メイナードさんのケースを機に、日本では「尊厳死」の法制化を求める声が高まりつつある。末期患者が希望すれば医師は延命措置をやめても法的責任を問われないとする「尊厳死法」は、超党派の国会議員グループが2012年に法案を公表。国会上程の準備を進めているが、患者・障害者団体や法律家から反対の声が相次ぎ、実現していない。宗教界では大本・人類愛善会が「脳死・臓器移植法と同様、生命の切り捨てにつながりかねない」として反対している。

高齢社会へと進む日本で終末期医療の在り方は避けて通れないテーマだが、国民の議論は進んでいない。個人・社会の死生観が問われる問題であり、宗教界が議論をリードしてほしい。