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認知宗教学の展開 複雑な宗教現象に普遍性探る

2015年11月6日付 中外日報(社説)

日本ではまだ関心を持つ宗教研究者は少ないが、欧米では認知宗教学はすでに一定の研究領域になっている。英語名称であるCognitive Science of Religionの頭文字をとったCSRという略称が定着している。

宗教研究関連の最も大きな国際学会であるIAHRは5年に1回開かれるが、2010年にカナダのトロント大での会議の時にCSR関連の発表が急に増えた。この研究の特徴は脳科学や進化心理学、認知人類学などにおける最近の研究成果を相互参照し、新しい宗教研究の視点を提起していることにある。

宗教研究は具体的な宗教史、宗教現象に沿ってなされてきたし、これからもそうであろう。宗教という人間の営みが他の営みとどこで異なるかは、個々の宗教の歴史を踏まえることで、互いに了解が可能になる。しかし、認知宗教学では、最初から宗教が特別な現象であるという仮定から出発していない。もし特別であるとするなら、どこが特別なのかを考えようという立場である。宗教の営みも人間がなす営みの一つであるから、人間の脳の機能、認知の特徴、心の働きの特徴をまず考える。

それ故、これを無神論に近いと受け止め警戒する神学者などもいるようだが、そうした立場を意識する研究者はおそらく一部である。それに従来も無神論的立場からの宗教研究は存在した。宗教者が無神論的な視点からの議論を警戒するのは分かるが、研究者がそれらを排除する理由はない。

「聖なるもの」とかスピリチュアリティーといった概念は、宗教を理解する上で重要なものとされている。しかし、「聖なるもの」やスピリチュアリティーが具体的に何を指しているか、またそれがなぜ大事であるかについて、はっきりとした合意があるわけではない。研究者から見て、宗教は依然として不可思議な対象で、謎がいっぱいある。人間がなぜ宗教を必要としたのかは、まだ十分分かっていない。

それを考えていく上で、ウェーバー、デュルケーム、エリアーデなどの古典的な学説だけでなく、最新の研究を参照していくことも当然ながら欠かせない。グローバル化する世界で展開している宗教現象は一見すると複雑さを増しているようである。ところがCSRはむしろその複雑さの背後に普遍的に存在するような要因を見いだそうとしている。人間の脳に深く刻まれた認知のメカニズムが、なぜ宗教というものを普遍的に生み出したかという視点からの議論は見過ごしてはならないものである。