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葬送秩序の変化 墓地のあり方も問われる

2015年11月4日付 中外日報(社説)

死者埋葬の儀礼の起源は古く、およそ10万年前、ネアンデルタール人がすでに行っていたという説もある。死者に対する敬意と畏れは人間性の根幹をなす感情の一つ。葬送はその芽生えとともに始まった。

日本でも縄文時代にさかのぼる埋葬の遺跡が見つかっているが、「家」が墓を護持継承する現代につながる葬送の形が一般庶民の間でも固定的になるのは、研究者によればさほど古いことではない。葬制・墓制に詳しい森謙二・茨城キリスト教大教授によると、墳墓は祭祀財産として「家」によって継承されるべきだとする観念が一般的になったのは19世紀末以降だという。

少子化と家族関係の変貌で、祖先の祭祀を担う「家」の弱体化が進んでいる。樹木葬、散骨などが象徴する葬送の自由に関する問題は、「家」が堅固な基盤を失ったことと深く関係している。無縁墓の増加も同じく「家」の変化に伴う現象だ。墓地埋葬法など現行法制度はこの大きな変化に十分対応するだけの規定を持たない。全日本墓園協会の講習会で先頃行った講演で、森教授は「家によって守られた死者の時代」は終わり、「家なき時代」の葬送秩序が問われていると分析した。

ところで、墓地の経営主体は行政指針に基づき原則として地方公共団体とされ、「これによりがたい事情があっても」(旧厚生省「墓地経営・管理の指針等について」2000年12月)、公益法人と宗教法人だけが経営主体となることが認められている。寺が墓地を運営するのは宗教的に当然のことのように見えるが、行政上、墓地はまず「公共的な施設」(同上)として扱われる。上記「指針」はその立場に基づき墓地経営の永続性・非営利性、明確な組織・管理体制、経営者の倫理性を求めている。

墓地開発をめぐっては大きな金が動くことがあり、過去にはトラブルが発生して宗教法人が破産・解散した例も。「指針」が宗教法人による営利企業への「名義貸し」防止に注意を向けているのは、言うまでもなく現実にその事例があるためだ。また、森教授は講演の中で、近い将来の寺院数大幅減少が予測される現在、寺の墓地の「永続性」が確保できるのかとも問い掛けた。寺の墓地経営には厳しい視線も向けられている。

死をめぐる儀礼が変化し、葬送秩序の再確立が論じられ始めた現在、寺院や教団は、行政側の公共的な施設という観点も踏まえ、墓地経営について改めてチェックする必要があるのではないか。