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「産む機械発言」再び 宗教界は「他山の石」に

2015年10月14日付 中外日報(社説)

女性の出産をめぐる閣僚の発言が問題になっている。菅義偉官房長官が先月末の民放番組で大物俳優の結婚に関連して「この結婚を機に、ママさんたちが一緒に子供を産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれたらいいなと思っています。たくさん産んでください」と述べた。10年前には第1次安倍内閣の閣僚が女性を「産む機械」に例え、反発を招いた。

安倍晋三首相は昨年の内閣改造で女性議員5人を大臣に任命し「女性重視内閣」と胸を張り、そのうちの1人を「女性活躍担当大臣」に据えた。「アベノミクス」と並んで「女性が輝く社会」が現政権のキャッチフレーズだが、官房長官の発言には、少子高齢化社会対策で女性を「資源」と見なし、経済成長戦略の中核に位置付けようとする無意識の思考回路が働いているようで、眉をひそめざるを得ない。

そもそも「たくさん産んで国家に貢献してほしい」とはどういうことなのか。戦前、国は戦争遂行のために「産めよ増やせよ」と国民を鼓舞したが、この体質、発想とどう違うのか――官房長官はそうした指摘に対し「全く当たらない」と否定したが、残念ながら説得力は乏しい。

現内閣は「女性手帳」なるものを発案し、少子化対策で「卵子は老化する」というキャンペーンを行い、早めに子供を産んでほしいと呼び掛けた。しかし、女性を中心とした世論の反発を招き、手帳の配布を見送った経緯もある。

出産は女性にしかできないが、女性は出産のためだけに存在するのではない。「女性イコール出産」とみる官房長官らの短絡的な発想は、ジェンダーイコールな男女共同参画の社会の実現を目指そうとする世の流れに逆行するものだろう。

一方、政界以上に“ジェンダーの壁”が厚いとされるのは我が国の伝統仏教教団である。法要では女性僧侶は男性僧侶の下座に着座することが半ば義務化され、修行道場に女性僧侶は入れない教団もある。教団の要職者は男性僧侶の独占状態が当たり前だ。

「宗教界は一般社会とは価値観を異にしており、ジェンダーイコールや男女共同参画はなじまない」とする意見も根強いが、ジェンダー研究の第一人者、U・キングは「ジェンダーの視点を鋭く応用することなしには、どのような宗教ももはや正しく記述、分析、説明されない」と指摘する。

宗教者は、今回の政治家の問題発言を傍観するのではなく、「他山の石」として自らを省みるべきではないだろうか。