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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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深刻な難民問題 人道支援へ議論を

2015年7月8日付 中外日報(社説)

「世界難民の日」の6月20日、ミャンマー出身のイスラム系少数民族ロヒンギャと支援者らが東京・渋谷周辺でデモ行進し、日本政府や国際社会に支援を訴えた。

ロヒンギャは隣国バングラデシュからの「不法移民」とされ、国籍も付与されず、仏教徒が大多数のミャンマーで根強い差別を受けてきた。推計約80万人おり、密航船で周辺国に漂着して難民化し、国際問題になっている。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告書によると、紛争や迫害で国外に逃れた難民や国内の居住地を追われた避難民は2014年末時点で5950万人に上る。前年比で830万人増え、第2次大戦後の最多を更新した。

内戦が激化するシリア、イラクやミャンマーで増加する一方、受け入れを迫られるヨーロッパや東南アジアでは、国民の反移民・難民感情の高まりや財政難などで、締め出す動きが各国にある。

日本は1981年に難民条約に加入したが、2014年に受け入れを決めた難民は11人。13年の6人から増加したとはいえ、数千~1万人超の他の欧米先進国に比べると極端に少なく、「難民鎖国」「難民に冷たい」との批判が付きまとう。

日本は14年、米国に次ぐ第2位の約1億8千万ドルをUNHCRに拠出しており、人道支援への間接的な貢献度は高い。しかし、実際に難民の受け入れが進まなければ、国際的な評価は得られないだろう。

支援団体などは、日本の難民認定は国際基準に比べて厳し過ぎると指摘する。条約加入から30年を迎えた11年、衆参両院は難民保護と問題解決に継続的に取り組むことを決議したが、政府の取り組みは遅々として進まない。

宗教界では1970年代のインドシナ難民の大量流出以降、曹洞宗ボランティア会を母体とするシャンティ国際ボランティア会(SVA)や世界宗教者平和会議(WCRP)、キリスト教団体などが継続的に支援してきた。

2013年6月にはUNHCR、WCRP等が「信仰が支える難民保護」をテーマに東京でシンポジウムを開催。「人間の尊厳」や「共生」を説く宗教の人道支援に果たす役割が高く評価された。

日本で難民の受け入れが進まない理由の一つとして、紛争地から遠いという地理的要因が挙げられる。物理的な距離の遠さと共に、国民の間に難民問題を身近に実感できないことで生じる心の壁もあるのではないか。

壁を払い、行動へと向かう活発な議論を宗教界に期待したい。