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除染事業の“闇” 棄民政策の果てに

2015年6月12日付 中外日報(社説)

政府は、原発などで放射能にさらされる作業員の累積被ばく許容量を、現在の最高100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げる改定を進めている。重大事故発生時で、本人が同意した場合に限るとしているが、雇用の不安定な孫請け労働者が自由意思で同意を拒否できるか疑問もあり、批判が強い。作業員被ばく管理のずさんさは、福島原発事故後の除染でも再三指摘された。

「除染作業」をインターネットで検索すると、「日当1万7500円」などと「高給」で誘う求人情報が数多く出てくる。しかし一例を見ると、就業9時間、食費1400円、3人相部屋宿舎などと書かれ、赴任交通費や健康診断は「実働50日」の条件が付く。

猛暑、極寒の中で長時間放射線を受ける過酷作業だが、国が1件数百億円、各地で計数兆円にもなる「公共事業」としての除染を展開することで、どこが利益を受けるのか。元請けは巨大ゼネコン。入札では先行のモデル事業を担当した企業が競争なく受注する実態があり、落札価格も予定額の95%に高止まりという報道があった。

過日、福島県浪江町を訪れると、ゴーストタウンと化した街を大手土建会社のJV名を書いたトラックが何十台も走り回っていた。長期に避難生活を強いられている地元農家は「効果はほとんどないのに、ゼネコンが大もうけするばかり」と訴えた。田畑の表土剥ぎ取りも耕作の見通しは立たず、家屋の屋根除染は汚染水を出さないように紙で拭き取るだけ、山林はほとんど手付かずで雨が降れば平地に放射性物質が流れ込む。「作業するだけで、事後に線量測定もしていない」と憤る。

東京など大都市部の繁栄を支えるために、過疎地に原発が集中立地させられた。それが空前の事故を起こすと地元の人々が故郷を追われ、住まいも仕事も奪われた。一方で、経済格差社会で正規雇用からはじき出された人々が、遠くから除染作業員として駆り出されてくる。長期に出稼ぎに来た先で事故や病気、自死で亡くなる除染作業員が相次ぐ。引き取り手のないその遺骨が、住民が減った同県南相馬市内の寺院にずらりと並んで保管されている情景は、この国の「棄民政策」を物語っている。

ネット上に自衛隊OBが立ち上げたという企業の除染作業員募集広告があり、軍服姿の自衛官が勇ましく隊列を組む写真が掲載されていた。被災地の困窮をよそに「安保体制」の強化を推し進める安倍政権は、復興で「地元負担」を口にしている。棄民の痛みはなお引き続く。