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進むTPP交渉 情報公開が足りない

2015年6月10日付 中外日報(社説)

日米など12カ国がアジア太平洋地域で自由貿易圏づくりを目指す環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉が進んでいる。結果によっては国民の暮らしや文化に大きな影響を及ぼすことが予想され、TPPの持つ意味について改めて理解と議論を深めるべきだ。

TPPは参加国の農産物等の関税や医療、雇用など幅広い分野の規制をなくし、人・物・金・サービスの流れを活性化するのが目的とされる。日本は2011年に野田佳彦首相(当時)、13年に安倍晋三首相が交渉参加を表明した。

TPPは「例外なき関税の撤廃」が元来の趣旨だ。このため日本が「聖域」とするコメや牛肉・豚肉等の「重要品目」の関税などをめぐり、厳しい交渉が続いているとみられる。交渉は「食と農」以外にも、医療・薬品、金融・保険など様々な分野に及び、国民生活への影響は大きい。

13年の国会決議では、TPPが農林水産業に打撃を与え、地域経済・社会の崩壊を招き、食の安全・安心を脅かすなど国民生活に悪影響を与えることを懸念。重要品目の関税撤廃を認めないことや、残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組み換え食品の表示義務を維持するなど聖域、国益の確保を求めた。

宗教界では大本がTPPに反対し、交渉からの即時撤退を訴え、5月から街頭での啓発活動を始めた。TPPは「弱肉強食主義」の米国基準を押し付け、相互扶助・協働という日本国民が長年培ってきた精神的・文化的基盤を崩壊させると批判する。

大本の外郭団体・人類愛善会が3月に開いた講演会で、鈴木宣弘・東京大大学院教授は「国際条約を利用して米国の多国籍大企業がもうけやすい仕組みを世界に広げることにある」と「TPPの狙い」を語った。

TPPの問題についていまひとつ国民的議論が深まらない背景には、交渉の「秘密主義」がある。参加各国には交渉内容について厳しい守秘義務が課されており、話し合いの具体的な中身は一部の政府関係者しか分からないという。

報道で繰り返し「合意は間近」と伝えられても、内容が明らかにならなければ国民が理解を深めることは困難だ。国民の代表である国会議員にすら情報が開示されないのは疑問である。

国会決議は、交渉で集めた情報は国会に報告するとともに国民に提供し、幅広い国民的議論が行われるよう政府に求めている。交渉が大詰めを迎える中、政府はできる限り情報を公開し、国民への説明に努めるべきだ。