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自殺者の多い日本 誰も追い込まれない社会に

2015年5月27日付 中外日報(社説)

全国の自殺(自死)者数は内閣府が公表する資料によると1998年に急増し、2003年に3万4427人とピークに達した。その後、減少傾向を辿り、12年には15年ぶりに3万人を下回った。14年中の自殺者は2万5427人で、前年比6・8%減となった。

06年には自殺対策基本法が施行され、その効果が表れつつあるのかもしれない。ただし、14年の全国の交通事故死者数は警察庁によると4113人で、自殺者は実に6倍以上ということになる。日本は自殺死亡率も世界でも高い。15歳から44歳までの死因のトップは自殺で、若年層の死因第1位が事故である主要欧米諸国とは異なる傾向を示す。

12年8月に全面的見直しが閣議決定された「自殺総合対策大綱」の、「自殺は、その多くが追い込まれた末の死」「その多くが防ぐことができる社会的な問題」という指摘は実に重い。16年までに自殺死亡率を05年比20%以上減少させるというのが国の数値目標だが、大綱の基本認識を共有し「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現を国民挙げて目指すことが必要だ。

大綱は「遺された人への支援を充実する」ことを重点施策の一つに挙げている。「自死遺族」問題である。「自死」という表現は自殺を美化することになるといった意見もあるが、家族を失った悲しみの中で自殺への差別にさらされる遺族が「殺」という言葉を忌避する思いを深く受け止めたい。

18日に衆議院第1議員会館で開かれた「自死遺族等の権利保護シンポジウム」では、自死遺族や弁護士、司法書士らによって自殺者や遺族に対する偏見・差別などの例が報告され、「自殺に追い込む社会」の病理に直結する様々な問題が浮かび上がってきた。

例えば、いじめ自殺への対応では、遺族の心の傷に塩を擦り込むような教育関係者の責任回避、自殺者への差別などが指摘されている。賃貸共同住宅の自殺者に関しては、家主から損害賠償請求があるが、「全国自死遺族連絡会」によると、過大と思われる請求でも法廷で争われることはまれで、ほとんどの遺族は黙って支払っているという。肉親の死に追い打ちをかけるように、遺族には二次被害が負担となってかかってくる。

自殺・自死問題に取り組む宗教者は少ないわけではない。上記シンポジウムの参加者にも僧侶の姿が目立った。「社会的に追い込まれた末の死」という認識のもと、宗教者がなし得ることは多いだろう。教団等のレベルでも積極的な対応が望まれる。