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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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社会問題への発言 教団・宗門を超えた連携を

2015年5月8日付 中外日報(社説)

生命倫理や平和問題など社会の諸問題に対し、宗教から何らかの発言や応答がなされる場合、各教団・宗門単位で行われることが多い。こうした対応が複数の宗教の連携で行われる場合、一般社会へのインパクトもより強くなると思う。実際、日本宗教連盟、全日本仏教会、新日本宗教団体連合会といった規模の大きな宗教の連合体からの提言は、宗教界からのメッセージとして相応の社会的影響力がある。

近年では、教団付置研究所懇話会や臨床宗教師のグループからの発信も注目を集めている。教団付置研究所懇話会では、メンバーが宗教者であり同時に研究者である立場を生かして、生命倫理や自死問題についての取り組みを教団横断的に行っている。特に生命倫理に対しては、同懇話会有志が日本生命倫理学会の公募シンポジウムに過去5回登壇し、「いのちの尊厳と宗教」「医療現場での宗教者の存在とその言説の有効性」「宗教の死生観から問う現代日本の生命倫理」などのテーマで、宗教界としての積極的な提言をしてきた。この試みは、諸宗教が共有する生命の尊厳についての宗教界の見解を、学会ベースに乗せてアピールするものだ。

また、臨床宗教師の方は、東日本大震災の被災者支援という実践の現場から立ち上がっただけに、宗教的なケアや支援の在り方について宗教横断的な取り組みを続け、各地で共鳴する宗教者の動きも生まれてきた。昨年4月から、龍谷大では東北大とも連携協力しながら、臨床宗教師の養成に関する大学院教育プログラムを開始している。

各宗教が教えの違いを超え、手を携えて行う情報発信や行動実践は、布教目的のアプローチではないことが明白で、一般の人々も安心して受け止めることができる。また、それぞれに固有な教義の言葉ではなく、一般の人々の感性とも相通じる言葉を用いることで、宗教のメッセージをよりすんなりと人々の心に届けることも可能になる。そこには、超越的視座から見たいのちの尊厳、絶対的な平和の主張、また社会的弱者を大切にする視座と思いやり、実践の姿勢が込められており、長い目で見れば、問題に対する人々の自覚を促し、社会の意識を変えていくことにもつながるだろう。

どの教団・宗門にも現代社会の諸問題に対応し情報発信を行う部局を大なり小なり有しているが、混迷する現代社会だからこそ、宗教者としての叡智をオール宗教で積極的に発信することが、今後いっそう求められるところだ。