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夫婦別姓訴訟を機に 「真の名前」とは何か

2015年4月8日付 中外日報(社説)

「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」。民法750条のこの規定が個人の尊厳や男女平等などの憲法の理念に違反しているとして、事実婚の夫婦らが起こした「夫婦別姓訴訟」について、最高裁は15人の裁判官全員による大法廷で審理することを決めた。

原告らは「結婚すればどちらかの姓を名乗ることを強制され、精神的苦痛を受けた」として国に損害賠償を求めているが、一審、二審とも「別姓の権利を憲法が保障しているとは言えない」「違憲とは言えない」と訴えを棄却。原告らが上告した。

判例の見直しや憲法判断をする際に、大法廷で審理が行われる。最高裁が夫婦別姓にどのような憲法判断を下すのか、裁判の当事者だけでなく、社会的な関心も高まっている。

夫婦別姓については、1996年に法務大臣の諮問機関の法制審議会が、希望した夫婦が別姓を選択できる「選択的夫婦別姓制度」の導入など求めた民法の改正案を提出しているが、保守系議員らが「日本の家族の絆を守る」などとして反対し、改正案は今日に至るまで日の目を見ていない。

結婚前の自分の姓を変えたくないという人の中には「自らのアイデンティティーを失いたくない」という人もいるが、日本人の全員が姓を名乗ることを義務付けられたのは、1875(明治8)年に「平民苗字必称義務令」が発布されたことによる。その背景には、「戸籍の編集と、徴兵制度に当たって、国民の苗字と名を把握する」との陸軍の思惑も働いたようだ。

また、当初は夫婦別姓だったが98(明治31)年に明治民法が成立すると、現在の夫婦同姓の原則に転換されている。

男女平等の「平等」は仏教語では、真理の立場からすれば物事は皆同一ということだ。「法華経」など多くの経典は、仏の教えは一切衆生の救いを差別なく目指していると説く。

そして、その仏教には、仏弟子として新たに名乗る真の名前としての戒名(法名・法号)がある。例えば浄土真宗の場合は、基本的に法名は全てが「釈○○」で、「釈」が姓だ。

夫婦別姓、同姓と考えは様々でも、仏教の教えに帰依したならば、そのような俗世での考え方や価値観の違いを超え、みんな同じ釈尊の弟子となる。

夫婦別姓訴訟は、法律上の問題だけにはとどまらず、姓名、名字とは一体何なのかを様々な視点で考える機縁でもある。