ニュース画像
参列者が念仏を称える中、伊藤門主は1292霊の法名が記された御回向帳を1枚ずつ手繰った
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

道徳の教科化 心の奥底見据える知慧を

2015年2月20日付 中外日報(社説)

現在は「教科外活動」である小中学校の道徳が2018年度にも、検定教科書を使用し、成績評価(数値ではなく文章で評価)も行う「特別の教科」とされるが、文部科学省は4日、教育課程の基準となる学習指導要領の改定案を発表した。

第1次安倍政権でも「徳育」として「道徳の教科化」が検討されたが、検定教科書の導入が困難などの理由で見送られた。

しかし、11年に大津市内の公立中学の男子生徒が同級生らによるいじめを苦に自殺した「大津いじめ事件」を機に、学校における深刻ないじめの問題が社会的に注目を集め、文科相の諮問を受けた中央教育審議会(中教審)が昨年10月に道徳を「特別の教科」に格上げすることを答申した。

この背景に、正式の教科でないため道徳教育が形骸化し、それがいじめの一因となっているとの議論もある。だが、果たして道徳でいじめをなくせるのか。

「大津いじめ事件」を調査した第三者調査委員会委員を務めた教育評論家の尾木直樹氏は先月、大津市の龍谷大瀬田学舎で行った講演で「道徳は確かに大切だが」と断りつつ、「道徳でいじめはなくならない。いじめ事件が起こった中学校は道徳教育のモデル校だった」と疑念を呈した。

第三者委員会が13年1月にまとめた報告書は、自殺の原因となったいじめを「暗いトンネル」に例え、重篤ないじめが男子生徒に屈辱感、絶望感をもたらし「いじめの世界から抜け出せないことを悟り、生への思いを断念せざるを得なかった」と指摘した。

学習指導要領改定案は、いじめ防止のため、学習内容に「誰に対しても分け隔てをせず公正、公平な態度で接すること」などの6項目を加えたが、いじめを防ぐには、被害者のつらい気持ちに寄り添える思いやりの心を育むことが不可欠だ。

また、両親や教師など周囲の人々から本当に愛されたことや受け入れられたことがなく、自己肯定感が乏しく、対人不信のトラウマを抱えていることが、いじめの加害者に見られる感性の問題の一つとして挙げられている。

こうした加害者の心の闇にも光を当てない限り、いじめはなくならないだろう。

欧米の文化人類学者らは、現代の日本の道徳と宗教の関係について、宗教が道徳の根源になっていないと指摘するが、教科化された道徳の中で、人間の心の奥底を鋭く見据えてきた宗教者らの知慧を学ぶ機会は設けられるのだろうか。