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続発する文化財盗難 防犯対策に取り組みを

2015年2月13日付 中外日報(社説)

2012年に対馬で起こった仏像盗難事件はまだ記憶に新しい。昨年11月にも同地で仏像や経典が盗まれた。いずれも犯人は複数の韓国人であった。

対馬は北島と南島の大きく二つの地域に分けられる。それぞれ国際ターミナルの港がある。北部にある比田勝港と、南東部にある厳原港である。どちらの港にも韓国の釜山港との間を往復する高速船が停泊する。比田勝港からは、1時間少々で釜山港に行ける。福岡港に行くよりずっと近いのである。そのことも関係して、対馬には韓国からの観光客が目立つ。

韓国からの観光客はほとんどグループで見学に来る。一部は神社仏閣にも関心を示す。神社の絵馬の半分ほどがハングルで書かれている所もある。日本的な祈願をすることにあまり抵抗がないことを示している。しかし、中には対馬に貴重な文化財があることを知り、グループで窃盗を行う者たちが出てきている。12年の事件では、盗んだ仏像を返す必要がないという、日本では考えられない論理が韓国で起こったため、大きな波紋をもたらすことになった。

神社仏閣等で貴重な文化財が盗まれる事件は、改めて言うまでもなく日本各地で起こっている。対策を取っている社寺が多いが、対応しようのないこともある。特に神職や僧侶、あるいは事務をつかさどる人が寺社の近くに常駐できないような場合である。人口減が著しく近くに人家もほとんどない地域となると、悪意ある行為にはなすすべもない。例えば対馬では、このところ人口は減り続けており、1960年の国勢調査で約7万人だった人口も、昨年末には3万人余になった。

文化財の盗難だけでなく、賽銭泥棒も実はけっこう厄介な問題である。社寺にはその日のうちに現金を処理する人手がない。賽銭箱を空にすると、盗みに入った者が腹を立てて放火をするかもしれないので、少しだけ残しておくという話も聞く。情けないと言えば情けない話だが、どこにでも少数とはいえ道徳・倫理が通じない人間がいるのも事実である。

特に過疎地の場合、こうした犯罪行為に対する有効な対応策はあるかといえば、非常に厳しい。貴重な文化財でもある仏像などを守るには、それらを管理可能な施設に集めるというのも一つの方法かもしれない。ただこれは各宗派とか各神社庁とかいったレベルでこそ実現できる対策と言えそうである。こうした事態への対処は過疎地だけでなく多くの宗教施設において、真剣に考えるべき時代になっているのかもしれない。