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受精卵の着床前検査 新たな「命の選別」か

2015年2月6日付 中外日報(社説)

日進月歩の生殖医療の分野で、今年新たな臨床研究が始まる。体外受精させた受精卵の染色体を調べ、異常のないものを子宮に戻す「着床前スクリーニング」と呼ばれる検査だ。受精卵を調べることで流産を防ぎ、出産の確率が上がれば不妊に悩む夫婦の朗報となる半面、「命の選別」にもつながる技術だけに、宗教界をはじめ社会の幅広い議論が望まれる。

女性の妊娠年齢が高まり、体外受精など不妊治療をしても出産に至らない事例が増えてきた。受精卵の染色体の数に生じた異常が原因の一つとみられている。

日本産科婦人科学会は昨年12月、受精卵の段階で遺伝子を調べる着床前スクリーニングの臨床研究の実施を決めた。2月7日に東京で開く公開シンポジウムなどで一般の意見を聞き、年内にも一部の施設で研究をスタートさせる。

出生前診断として胎児の染色体異常を調べる超音波検査や羊水検査などは広く行われている。ダウン症など胎児の遺伝子異常を母親の血液で調べる新型出生前診断の臨床研究も2年前から始まった。

受精卵の検査は、学会ではこれまで重い遺伝病の患者などを対象に一部の遺伝子を検査する「着床前診断」を限定的に実施。全ての染色体を調べるスクリーニングは指針で禁止してきた。

しかし検査技術が向上し、国内の一部の医療機関は指針に反してすでに診療を行っている。結果が陽性の場合、妊娠中絶に至ることの多い新型出生前診断を認めてスクリーニングを認めないのはおかしいとの指摘もあり、臨床研究の実施を求める声が高まっていた。

臨床研究では600人を対象にスクリーニング検査をする、しないの両グループに分け、出産率や妊娠率が改善するかを3年かけて検証する。医学的効果が認められれば社会面・倫理面も含めて改めて是非を検討するとしている。

スクリーニングは、ダウン症など染色体に異常があって生まれてくる命を受精卵の段階で排除することになり、「命の選別」につながるとの批判がある。胎児に比べて受精卵の検査は心理的なハードルが低く、安易な拡大を招くとの見方も強い。

日本では2012年に約32万6千回の体外受精が行われ、約3万8千人の子どもが生まれた。体外受精による出生は今後も増える見通しで、検査の社会的影響は大きい。男女の産み分けや親の望む特徴を持った子どもをつくる「デザイナーベイビー」につながる問題もはらんでいる。

受精卵という「命」をめぐる議論を宗教界から盛り上げたい。